2022年3月25日公開 112分
5/3(火)鑑賞
公式サイトより
ママの自慢になりたかった
パパを喜ばせたかった
ヘレンともっと一緒にいたかった
彼みたいになれなかった
実録「ポートアーサー事件」
1996年4月28日オーストラリア世界遺産
オーストラリア・タスマニア島
ポート・アーサー流刑場跡にて発生
被害者はオーストラリア史上最多数の
無差別銃乱射事件
通称「ポートアーサー事件」
本作はマーティン・ブライアント
犯行時27歳の半生を描いた作品
「NITRAM」=マーティン・ブライアントを
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズが演じ
第74回カンヌ国際映画祭で主演男優賞
第11回オーストラリア・アカデミー賞で
最多8部門を受賞
事件の背景・補足
タスマニアはかつて囚人の流刑地でした
観光が主な産業でその閉鎖的なコミュニティで青年は母と父と暮らしていました
事件は『タスマニア物語』で、ここが日本人の人気観光地として定着した矢先に起きます
調べる中で、犯行前「今日はニップ(日本人)が少ないな/今日はワスプばっかりだな」と彼が呟いた。彼が狙っていたのは日本人だ という情報がありましたが、事実か不明です
午後1時30分頃、ポートアーサー内のカフェで彼は、無差別にライフルを発砲
20人の死者と12人の重軽傷者発生
その後、観光バスの運転手や乗客を射殺
更に車で逃走し、通行人を射殺
途中ガソリンスタンドで人質をとり、コテージに立てこもります。翌朝コテージは出火
その際逮捕され、コテージの焼け跡から人質とオーナー夫婦の遺体が見つかります
死者35人負傷者15人を出して各国が騒然となり銃規制の必要性が全世界に問われた事件
犯人のマーティン・ブライアントは、知的障害があり知能テストの結果は平均以下でした
しかし事前に現場を下見し複数のライフルを用意していた事で、犯行は計画的とされます
精神鑑定でも責任能力ありと判断され
仮釈放なし35回の終身刑を宣告されました
彼はなぜ、銃を入手し犯行に至ったのか?
事件当日までの日常と生活
オーストラリア、タスマニア島にて
小さな頃から
周囲になじめず孤立、同級生は本名を逆さ読みし「NITRAM(ニトラム)」と呼びます
それは「MARTIN(マーティン)」を逆さにした蔑称で「のろま」というあだ名でした
七歳の頃
炎に魅せられた彼は火傷で入院。これに懲りて花火は止めるかと取材されると「もちろん続ける」と笑顔で応じた映像が残っています
成長後は
仕事に就かず親と同居します
純粋な面と、獰猛な野獣みたいな面があって
鬱に沈んでいるかと思えば、無邪気に笑い
他人に迷惑かけても、花火はやめられない
人と仲良くし、感情を押さえる事は苦手
母(左⬇)は息子が「普通」に生きるよう願いますが小言が多く諦めと冷淡さがあります
父(右⬆)は息子の将来を案じコテージの共同経営を願い、彼をケアしようとします
サーフィンに憧れている彼は、ボードを買うために庭の芝刈りの訪問営業を始め、訪ねた古い豪邸でヘレン⬇と出会います
ヘレンは彼が抱える困難さに忍耐強く接することができ、ジャッジしませんでした
社会から阻害されている2人は、自然の中で彼らだけの天国を作った。両親の庇護下を離れ、ヘレンの元へ飛び出していった彼とヘレンとの関係は悲劇的な結末を迎えます
原因は、テンションが上がった彼が、危険お構いなしで運転中のヘレンの車のハンドルに、横からちょっかいを出し悪ふざけをして
車は横転する事故を起こしヘレンは死亡
ヘレンは資産家で彼に莫大な遺産を残します
その後大金を手にしたけれど、彼の孤独感や怒りは増大し精神が狂っていきます
気づいた彼の特性
自身の言動や行動に対して、相手がどう思うか想像する力が弱いか、無い。これをしたらどうなるか?と想像が出来ないようだった
具体的に見受けられた特性
危険を認識出来ない
衝動性を抑えられない
先のことを予測できない
欲求をコントロールできない
他人との意思の疎通ができない
それは困ると言っても全く通じない
思いついたらすぐ行動に移してしまう
人間関係や社会的ルールが理解できない
彼は…
居場所が欲しくて普通になる努力をする
しかし失敗を重ねて、居場所を失っていく
何をしても、ダメなんだと気がついたから
「普通になりたいのにどうしたらいいか分からない。だからこのままでいるしかない」
と発言したのかもしれない
他人はただ普通でいられるのに、自分は最初から普通と違い、周囲が自分を常に不信感に満ちた目で、様子がおかしいぞとジロジロ見てくる、それが彼の日常だったとしたら…
感想
こういう人を知っているし
似たような人を見たことはある
毎日の生活の中で見かけるその人が、だんだん危険になっていったら自分はどうするのか
寄り添う側に立っているのか
ジャッジする側で逃げ出すのか
正直に言うとわかりません
今も考えています、私は観て良かった
観て気が滅入る人もいたり、観るのに覚悟がいる人もいるかもしれないけれど
観る前と後では、作品で描かれたテーマが確実に引っかかり、何か残る、そんな作品だと思いました