下鴨車窓の『人魚』、観てきました。初日です。
簡単に感想を言うなら、面白かった。童話をがっつり堪能した、という感じかな。
アート志向というか、文芸的な香りのする舞台だったし、そういうような前情報(宣伝)であって、そういうつもりで観たけど、これは別に小難しいこと考えなくて、単に物語りを楽しむという姿勢で観て、単純に物語に引き込まれて楽しむ、そういう見方でいいんじゃないかと思う。
もちろん、寓話的な作品だから、何かしらのメタファーとか主義主張とか探ってみたくなるけど、それはこの作品の持つ懐の深さであって、特定の意味合いを見出そうと眉間に皺寄せて観るものでもないように思う。
物語の舞台、国や時代を特定させず、明快なテーゼも主張しない、それでも背骨を失わずにしっかりとした物語として受け入れることができる、これは凄いことだと思う。戯曲の力強さを感じた。
作中の語り口はは文語体というか翻訳調で、それが意図通りに舞台に堅牢さと「どこでもなさ」を描写している。
セリフで語られる海や風を、生々しく想像しながら観ることができた(僕が海育ちだからというのはあるかもしれない)。
登場人物では、僕は人魚に感情移入して観ていた。それが僕にとっては自然だった。
きっと、人によって心情を仮託するキャラクターはかわってくるだろう。
ネタバレのない範囲での感想はこんなところ。
まだ広島公演が残っているはずなので、公演の成功を祈ります。
ネタバレになる部分で書きたいことを書くと。
印象深かったのはやはり、男が殺された後の人魚の告白。
ひたすら克明に、行為の意味も分からずされたことを説明する人魚。
これって、狙って書いてると思うけど子供のレイプだよね。
登場人物や村人たちは人魚を畏れるけど、当の人魚は威厳もなにもあったもんじゃない、コメディのような口の悪さ。
人を殺すことを、まったく悪びれることなく「殺したつもりはない、食っただけだ」という。その発言が人間をどれほど恐れ憎ませるか知りもしない。
そこに、無邪気で、愛らしさを感じる。
日本的な、妖怪に表されるような自然観を感じる。
勝手なのは人間のほうだ。
だから、人の欲が対比として浮き立つ。
そういうところにそれぞれ感想のとっかかりが持てる作品なんじゃないかなと思う。
僕は人魚の境遇に強く共鳴しながら観ていた。
あと、こういう素朴で硬質な物語を堪能するのは久しぶりだった。
もっとこういうのも観たい。