無庵日録 (995) 井上靖「孔子」 | 日々新面目あるへし

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 一、日々新面目あるへし

2023/11/12 

 書架を整理していたところ、井上靖の小説「孔子」の文庫本が目に止った。読了日を表紙裏に2007年6月22日と記してあるから早や16年前になる。再読用にメモしておいた頁を読み井上靖らしい観方が実に好ましく思えた。新潮文庫のP91~p92である。

 

 ある人が孔子とはどんな人物かと孔子の弟子に尋ねた。それを答えられなかったことを知った孔子は、弟子たちにこう語らせている。「憤りを発して食を忘れ、楽しんで以て憂いを忘れ、老いのまさに至らんとするを知らず」そういう人物だと。

 

 この孔子の言葉を井上靖は、弟子たちにこう論じさせている。「憤りは生きて行く人間の道に外れたことに対する怒りである、楽しみは人間の心を安らかに、優しく、明るく、楽しくするすべてのことである」

 

 顧みて16年前の自分はこの孔子の憤りや楽しみをどう受けとめていたのであろう。人類の現在は明らかに孔子の憤りや楽しみを忘れてしまっている。論語読みの論語知らずという観方がある、自分も然りと思えてならない。