最後の課題 | めむたんの絵本

めむたんの絵本

めむたんは、Amazonで絵本を電子出版しています。
タイトルは、「きみといっしょに」、「あのもんのなかに」等です。

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こんにちは!
いかがお過ごしでしょうか?

遅くなりましたが、最後の課題であるお話「どんな色にもかなわない」を紹介させていただきます。
原稿用紙10枚分の少し長いお話です。
最後まで読んでいただけたら、とても嬉しいです(*^^)v


どんな色にもかなわない

 カメレオンちゃんは、ヤマモモの木のてっぺんで、空を見上げています。
「なんてきれいな青色なんでしょう!ああ、空の色に染まりたい!」
 カメレオンちゃんは、ふれたものの色に染まる自分の体を見ました。
「今は葉っぱの色。きれいだけど、空の青色にはかなわないわね」
 そのときです。
「カッカッカ!」
 ワシがおそってきました。
「キャー!!」
 おどろいたカメレオンちゃんは、葉や枝の色に染まりながら、木を転げ落ちていきます。
「キャー、止まらない!!」
 こてん。草原に落ちてしまいました。
「いったあい……」
 草原の黄緑色に染まりながら体をさすっていると、小さな声が聞こえました。
「カメレオンちゃん、大丈夫ですか?」
 カメレオンちゃんは、口をヘの字にして言いました。
「モグラくん、またあなたなの?」
 モグラくんは、もじもじしながら言います。
「痛くないですか……?」
「痛いに決まっているでしょ!それよりも、私に近づかないでよ!うんこ色に染まっちゃうじゃない!」
「すみません……」
「ほんっとにモグラくんの体って、うんこ色なんだから!」
 カメレオンちゃんはモグラくんに背を向けると、ヤマモモの木に登り始めました。
 ヤマモモの木のこんにゃく色に染まったカメレオンちゃんは、モグラくんの悪口を言います。
「毛がもじゃもじゃだし、手が軍手みたいだし、あ~んなきったないうんこ色だし」
 悪口は、木のてっぺんに着いても止まりません。
「あの時も、あの時も、あの時も!気が付けばいつも近くにいるし。うんこ色のモグラくんなんて、大キライ!」
 と、叫びました。
 それから三日たった朝、カメレオンちゃんは、草原で目を覚ましました。
 木のてっぺんで空を見つめるカメレオンちゃんは、よくワシにおそわれます。あまりにもおそわれるからてっぺんにいられなくて、草原で寝ることにしたのです。
「今日の空もきれいな青色ねえ」
 草原の黄緑色に染まっているカメレオンちゃんは、ため息をつきました。
 ふと横を見ると、タンポポが咲いています。
「空ほどではないけれど、きれいな色」
 カメレオンちゃんは、花びらに頭をふれさせて、頭だけ黄色になりました。
 すると。
「カッカッカ!」
 ワシがおそってきました。黄緑色だったところが黄色になったから、見つかってしまったのです。
 ワシが、口を大きく開けておそいかかってきます。
「キャー、助けて!!」 
 そのとき、茶色い何かが飛び込んできて、ワシの口ばしにパンチをしました。少しひるんだけれどなおもおそってくるワシに、今度はキックします。
 パンチ!キック!パンチ!
 長い間戦って、とうとう、茶色い何かはワシを追い払いました。
茶色い何かとは……。
「モグラくん!!」
 ぐったりしながら、モグラくんは聞きます。
「カメレオンちゃん、大丈夫……?」
「大丈夫よ!でも、どうして?」
「カメレオンちゃんを、守りたかったから」
 カメレオンちゃんは、気が付きました。
 あの時も、あの時も、あの時も、モグラくんは、私を守ってくれたのだわ。
「モグラくん……。今までごめんなさい」
 カメレオンちゃんは、自分の体をモグラくんの体にふれさせました。
 モグラくんが言いました。
「ボクの色に染まってしまったよ……。うんこ色はイヤなんじゃなかったの?」
「いいの。だって、モグラくんの心は、空よりもきよらかですきとおっていて、どんな色にもかなわないくらいきれいなのだもの」
 それからは、カメレオンちゃんはモグラくんを大切にして、うんこ色なんて言わなくなりました。


最後まで読んでくださりありがとうございます(*^_^*)