
クジラさんは泳いでいました。
雨が降っているので、滴が体に当たります。
ぼつ、ぼつ、ぼつ。
滴のにぶい音を聞きながら、クジラさんはつぶやきました。
「今日は一日雨なのかなあ」
そのとき、ふっと頭が楽になりました。
滴が当たらなくなったのです。
「あれ?」
不思議に思って見てみると、頭の上に赤い傘がありました。
「あら?」
もっとよく見てみると、傘をさしかけている女の子がいました。
「やさしい女の子さん。ありがとう。でも、そんなことをしたら、君がぬれてしまうよ」
女の子は、にっこり笑いました。
「大丈夫よ。ヤシの木さんが、私を守ってくれているもの」
よくよく見てみると、ヤシの木が葉っぱを広げて、女の子がぬれないようにしてくれていました。
「本当だね」
「うん」
クジラさんと女の子は、ふふっと笑いあいました。
ぴと、ぽと、ぱて。
傘とヤシの木の葉っぱに当たる滴が、心地よい音をたてます。
ぴと、ぽと、ぱて。
「素敵な音だね」
「うん」
クジラさんと女の子は、また、ふふっと笑いあいました。