そよ風はささやく | めむたんの絵本

めむたんの絵本

めむたんは、Amazonで絵本を電子出版しています。
タイトルは、「きみといっしょに」、「あのもんのなかに」等です。

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そよ風が部屋を駆けぬけ飛んでゆく籠もるわたしの頬をなでつつ

今は夏。

開放感に誘われて、人は海や山、そして空へと出かけていきます。

そんな中、一人で部屋に閉じこもっている少女がいます。


少女に、そよ風がささやきかけます。

「ねえ、あそぼう。外に行こうよ。」

少女はいいえと首を振ります。

「お部屋の外は、怖いことだらけ。」

そよ風は言います。

「そんなことないよ。素敵なこともたくさんあるよ。」

少女は、いいえいいえと首を振ります。

「素敵なことなんて、ひとつもないわ。」

そよ風は、少女の目をのぞきこみます。

「臆病な少女。それでは、私が教えてあげよう。」

そよ風は呪文を唱え、それからくるりと一回転しました。

すると、どうでしょう!

海の香りや山の香り、そして花の香りなど、たくさんの香りが次々に少女を包みます。

「なんて良い香り!」

少女は、うっとりと目を閉じました。

そよ風は、少女の頬をやさしくなでます。

「ほうら、素敵な香りだろう?外へ行けば、もっとたくさんの香りと出会える。」

少女はうつむきました。

「そうみたいね。でも、外に出るのは怖いわ。」

そよ風は、少女の頬を、さらにやさしくなでます。

「少しずつでいいんだよ。今日は部屋で空を眺めよう。」

そう言うと、そよ風は少女の隣に座りました。

安心した少女はほうっと息を吐き、そよ風とともに窓から空を眺めました。


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