ほうれ えい線行ってるよ シワが私を誉めてくれます
咲子さんは、今モデルをしています。同居している義理のお父さん、シワさんが絵描きさんなので、時々モデルになってあげているのです。
今日は顔だけを描くのだそうです。
シワさんの注文どおりの表情とポーズをとりながら、咲子さんは、こっそりとため息をつきました。実は咲子さんは、ほうれい線に悩んでいるのです。
モデルをしているからでしょうか?咲子さんは、自分はまだまだ若いと思っていました。だから、初めてほうれい線を見つけた時、ショックでしばらく動けませんでした。
『ほうれい線なんて・・・』
咲子さんの心が真っ暗になりかけてきた時、シワさんが、
「ほうれ、できたよ。今日はえい線行ってるよ。見てごらん。」
と言いました。
見せてもらうと、そこにはにっこりと笑った円い顔。ほうれい線が口の周りに薄く描かれています。
「あら。」
咲子さんは、その絵が好きになりました。ほうれい線が笑顔を引き立てているように見えました。
咲子さんの嬉しい気持ちが伝わったのでしょうか?シワさんは、咲子さんの顔をのぞきこんで、
「ほうれ、えい線行ってるじゃろう。ふくよかな顔じゃあ。」
と誉めてくれました。
