しゃぼん玉の中の迷いごと | めむたんの絵本

めむたんの絵本

めむたんは、Amazonで絵本を電子出版しています。
タイトルは、「きみといっしょに」、「あのもんのなかに」等です。

絶賛発売中です!!

ストローに今日の迷いを吹き込んで月に飛ばすよしゃぼんの玉を


広い広い宇宙の片すみで、お月さまはうたたねをしています。
 宇宙は真っ暗で、音もありません。そんな中でのうたたねは、ショートケーキの上の苺のように、きゅうんとするような甘さがあります。お月さまはそれを味わいたくて、毎日うたたねをするのです。


そんな時。

 プチンッ。

 お月さまのほっぺたに、何かが当たってはじけました。

「おや?」

お月さまは目を開けました。

プチン、プチン。

プチンと当たるその正体は、数え切れないほどのしゃぼん玉でした。しゃぼん玉は、青い海をたたえる地球から来ています。


地球の人たちは、自分がしゃぼん玉を毎晩飛ばしていることを知りません。自分の迷いを自分の中に抱えたまま眠りにつき、朝を迎えると思っています。

 でも、ご存知でしょうか?ふっともらされたため息やつぶやきは、元の身体に戻ることなく、目には見えないしゃぼん玉となって、お月さまに向かってゆくのです。

 どうしてお月さまなのでしょうか?

 それはきっと、半月のときも三日月のときも、いつも変わらず月の表を地球に向け続けているからなのでしょう。

 お月さまは、自分に向かって飛んでくる、たくさんのしゃぼん玉を見つめました。

「今日は、迷いが多かったようだね。」

地球に住む人たちみんなの迷いが、数え切れないほどのしゃぼん玉の中につまっています。


正直に言うと、お月さまは、それらの迷いをどうしてあげることもできません。向かってくるしゃぼん玉をただただ受け止めて、大丈夫、大丈夫と、ささやくことしかできません。自分には何もできないと、落ち込むこともあります。でもそれでも受け止めささやき続けるのは、そうすると地球の海の青が、少し明るくなるような気がするからです。


眠る前のひと時、地球の人たちは何を思っているのでしょうか?しゃぼん玉を飛ばして、少しは楽になったのでしょうか?そうだといいのだけれど。

 お月さまは、そういうことをとりとめもなく考えながら、地球に向かって、

「大丈夫、大丈夫。」

と、今日もささやき続けるのです。


イメージ 1