カラフル、カラフル!
 お日さまがぽかぽか光るある日のことです。
 
4才の女の子、チカちゃんはおうちの庭でマリつきをしています。
 
そのマリはとてもよくはずみます。チカちゃんがポンッとマリつきをすれば、マリは空にむかってジャンプするのです。チカちゃんはそれがおもしろくて、夢中でマリつきをしていました。
 
 そんな時、チカちゃんのおにいちゃんが、
 
「なにしてるの?」
 
と庭にやってきました。チカちゃんは、
 
「マリをジャンプさせてるの。」
 
と言いました。すると、おにいちゃんが、
 
「ボクはもっとジャンプさせられるよ。」
 
と言いました。それで、二人でマリつき競争を始めました。
 
二人で、えいっ、おりゃっと競い合っていると、ママがやってきました。
 
ママも入れて三人で競争していると、パパがやってきました。パパも入って四人で競争していると、おとなりさんが、
 
「わたしもまぜてください。」
 
とやってきました。
 
五人で競争していると、散歩中のバレー選手が、
 
「わたしもしてみたい。」
 
とやってきました。
 
たくさんの人たちが、
 
「わたしもやりたい。」
 
とやってくるので、チカちゃんのおうちの周りは、色とりどりのマリでカラフルになりました。
 
そのようすが話題となって、テレビで報道されました。すると、それを見た人たちも、
 
「わたしもやりたい。」
 
と、マリつきを始めました。
 
そうしていつのまにか、日本じゅうの人たちがマリつきに夢中になっていました。
 
日本中で、赤や黄色やオレンジのマリが空たかくぽおんぽおんとはねあがります。その様子を飛行機から見た外国の人たちは、
 
「おう、日本はカラフルね。」
 
と、手をたたいて喜びます。
 
その人たちが、自分の国の人たちにマリのことを教えたら、その国の人たちも、マリつきがしたくなりました。
 
そしてそれは世界に広がり、やがてアメリカやフランスやいろんな国もカラフルになりました。
 
そんなある日、あるえらい人が、
 
「一人でやっているだけではつまらない。マリつき大会をしようではないか!」
 
と言いました。なんてすてきなアイデア!世界じゅうの人たちが
 
「いいね!」
 
と言ったので、マリつき大会が行われることになりました。
 
 ルールは簡単。
 
日本がお昼の十二時になった瞬間、みんなでいっせいにマリをつきます。そしてマリを一番高くはねあげた人が優勝なのです。
 
 みんなで相談した結果、マリつき大会は八月一日の日曜日に行われることになりました。
 
 八月一日、日曜日になりました。世界中のみんながそれぞれの国でマリを持ち、日本が十二時になるのをまっています。もちろんチカちゃんもマリを持って待っています。
 
 カチ、ボーン、ボーン、ボーン・・・。
 
十二時になりました!
 
パーン!という合図とともに、世界中のみんなが、いっせいにポン!とマリつきをしました。
 
 赤や黄色、青やオレンジの色とりどりのマリがはねあがります。みんなが思いっきり強くマリをついたので、数えきれないほどたくさんのマリが、宇宙にポーンと飛び出しました!
 
 その瞬間、地球は宇宙で一番カラフルな星になりました。
 
「やっぱりやめておこう・・・。」
 
宇宙人たちはささやきあいました。
 
地球のみんなは知らなかったのですが、実は地球は、宇宙人に狙われていたのです。
 
宇宙人たちが地球に向けてバクダンを打とうとしたその瞬間、地球では大会が始まって、マリは宇宙に飛び出していたのです。
そしてカラフルになった地球を見て、宇宙人たちは怖くなってしまったのです。
 
宇宙人たちはぶるぶる震えて言います。
 
「地球は弱い星かと思っていたが、あんなにすごいことができるのか。」
 
「こんなすごい星は征服できない。」
 
「反対にやっつけられてしまうぞ。」
 
「ぼくたちの星に帰ろう。」
 
「そうしよう!」
 
 宇宙人たちはそそくさと帰っていきました。
 
地球は知らない間に宇宙人を撃退していたのです。
 
 ところで、マリつき大会の優勝者は誰でしょう?
 
それはもちろん、チカちゃんです。
 
だってマリつき上手だものね!
