うん！

貝がらのかけらのような陽の光

　　　　　　　　　　　浴びつつ今日も君は駆けゆく

１０歳の男の子、あきらくんは、今日は遠足でした。

みんなと一緒に、ちょっと遠い公園まで行ってきたのです。

「ただいま！ママ、これあげる！」

出迎えたママにあきらくんが差し出したのは、５枚のもみじ。

どれも赤や黄色に色づいて、ぷうん、と秋の香りがします。

それらを受け取ったママは、葉っぱの香りをかぎながら聞きました。

「ありがと！おかえり、あきらちゃん、遠足は楽しかった？」

「うん！」

あきらくんは、元気よく答えます。

「そう、良かったね。」

「うん！」

ママは、さらに聞きます。

「お弁当、おいしかった？」

「うん！」

「お友達と、たくさん遊んだ？」

「うん！」

「何して遊んだの？」

「うん！」

「誰と遊んだの？」

「うん！」

あきらくんは、「うん！」しか言いません。

おまけに、さささささっと体操服を脱いで、タンスから、お洋服を出しています。

「あれ？あきらくん、出かけるの？」

「うん！」

「遊びに行くの？誰と？」

「うん！」

「うん！じゃなくって、誰と？」

「こうすけくんたちと！」

「どこで遊ぶの？」

「うん！」

「そうじゃなくって、どこで遊ぶの？」

「学校！」

あきらくんは、あっという間にお洋服に着替えてしまいました。

「５時には帰るのよ。」

「うん！行ってきま～す！」

準備のできたあきらくんは、玄関を飛び出して行ってしまいました。

ついさっき帰って来たばかりなのに。

ママが慌てて玄関の外に出ると、あきらくんは、たったかたった、と、もう声が届かないほど遠くに行ってしまっていました。

「行っちゃった・・・。」

今日は天気がよくて風も強くなかったので、遠足は、とても楽しかったのでしょう。

そしてこれからはまた、学校で、お友達とおにごっこなどをして、おもいっきり遊ぶのでしょう。

駆けてゆくあきらくんの背を、お日さまの光が照らします。

ママは、ちょっとさびしいような気もするけれど、まあ、いいか、と思いました。