ほっぺたを真っ赤に染めてもみじ葉よ
秋に告白されたのですか
暑かった夏がようやく終わり、少しずつ、風が冷たくなってきました。
これから風はどんどん冷たくなり、お日さまの光も、少しずつ弱くなっていくのでしょう。
季節は、秋になりました。
これは、とある町のとある公園でのお話しです。
ひゅうう。
四季を司る妖精の一人が、秋の風にのり、公園にやってきました。
名前を秋さんと言います。
秋さんは、やる気まんまん。
「さあ、これからは、私の季節だ。公園の木々を、どのように染めあげようか。」
そう言って、秋さんは公園を見まわしました。
その時、
「あっ!」
秋さんは、一枚の葉っぱを見つけました。
その葉っぱの名前を、桜の葉さん、と言います。
「なんて清らかな葉っぱなんだろう・・・。」
秋さんは、一瞬で恋に落ちました。
ドキドキ、ドキドキ。
秋さんは、胸の高鳴りを抑えることができません。
こうなったら行動あるのみ。
名前に似合わず熱情的な秋さんは、さっそく、桜の葉さんに近づきました。
秋さんは、桜の葉さんの前にひざまずいて言いました。
「ああ、桜の葉さん、君はなんて清らかなんだ。その緑色の体を、私の色に染めてあげたい。」
とても控えめな桜の葉さんは、びっくりしました。
こんな私が、清らかだなんて・・・。
桜の葉さんは、うつむいて言いました。
「そんな。わたしなんて、取るに足らない、どこにでもいるような、ただの葉っぱです。」
秋さんは、いいえいいえと、首を振って言いました。
「そんなこと!私はあなたを一目見たときから、他の葉が目に入らなくなりました。あなたほど清らかな葉は、どこを探してもいるわけがない。」
桜の葉さんのほっぺたが、少し赤色に染まりました。
「うれしい!そんなことを言ってもらえるなんて。」
秋さんは、さらに言います。
「桜の葉さん、僕と結婚してください。」
桜の葉さんのほっぺたは、また少し赤色に染まりました。
「どうしましょう。お気持ちはうれしいのですが、本当に私でいいのでしょうか?一晩考えさせていただけますか?」
秋さんは少し考えた後、大きくうなずいて言いました。
「分かりました。大事なことですものね。明日の朝、私はもう一度、あなたに告白をします。その時に、お返事を聞かせてください。」
そう言うと、秋さんは風に乗って、去っていきました。
一人になった桜の葉さんは、ほっぺたに手を当てて考えます。
「秋さん、素敵な方。でも、本当に私でいいのかしら。私は取るに足らない、どこにでもいるような、ただの葉っぱなのに。」
その日の夜空は雲一つありませんでした。
空一面に広がる星々は、きらきらとまたたき、まあるい月は、柔らかな光で公園を照らします。
朝、秋さんは再び、公園にやってきました。
そして、昨日のように、桜の葉さんの前にひざまずいて言いました。
「桜の葉さん、僕と結婚してください。」
桜の葉さんは、ほっぺたを昨日よりもさらに赤く染めて言いました。
「はい。私でよければ喜んで。」
秋さんは、安堵の吐息をつくと、いきなり立ち上がり、桜の葉さんを抱きしめました。
「ああ、うれしい!良かった!私の想いを受け取ってくださった!」
そして、桜の葉さんを、さらに強く抱きしめて、ほっぺたに口づけをしました。
口づけをされた桜の葉さんは、これ以上ないくらい真っ赤に染まり、秋の色になりました。
それから2,3週間経ったでしょうか?
少しのんびりやさんの冬さんが、秋さんと桜の葉さんに祝福をしようと、公園にやってきました。
「秋さん、桜の葉さん、ご結婚おめでとう!」
そう言いながら、冬さんは公園じゅうをくまなく探しましたが、二人はいません。
公園には、葉をすっかり落とした桜の木があるばかり。
「来るのが遅すぎたか。」
冬さんは、頭をかきかき、公園を去っていきました。
秋さんと桜の葉さんは、どうしたのでしょうか?
二人は新婚さんです。
きっと、秋の風に乗って、冬を迎える前の国々を旅しているのでしょう。