今年こそ いっしょに花を 見に行こう
モグラはそっと 妻の手にぎる
今まで梅に遠慮しておとなしくしていた桜が、少しずつ芽吹き始めた。
「あたたかくなったなあ・・・。」
大地から顔を出したモグラはつぶやいた。
家には、何年も寝たきりの妻がいる。
病気がひどくなるといけないので言えずにいたが、モグラは妻と桜を見に行きたいと、何年も思っていた。
最近の妻はいくぶん調子が良いようである。
「誘ってみようか。」
モグラはゆっくりと、妻のもとへ戻り始めた。
