空の耳あか取り | めむたんの絵本

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めむたんは、Amazonで絵本を電子出版しています。
タイトルは、「きみといっしょに」、「あのもんのなかに」等です。

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空の耳あか取り
 
 あるはれた日の朝、空は耳あかを取ってもらおうと思いました。
空はぷっくりおなかのようせい、きゃらくんにお願いをします。
「耳あかを取ってほしいのですが。」
「いいですよ。」
きゃらくんはそう言って、さっそくじゅんびをはじめました。
持っていくものは、毛糸のぼうし、大きなふたつのふくろ、長いロープ、それからスコップとドリルです。そしてそれにふわふわのブーツをはいて、サングラスをかければかんぺきです。
 空はきゃらくんにふかぶかとおじぎをして
「よろしくおねがいします。」
と言い、雲の上にごろんとよこむきにねころびました。きゃらくんはロープを右の耳たぶにひっかけて、
「はい、では行ってまいります。」
と、ふかぶかとおじぎをして、耳の中に入っていきました。
 
下りて行くと、ありますあります、エメラルド色にひかる耳あかが。きゃらくんは、さっそく耳あか取りをはじめました。
ザックザックザァー、ザックザックザァー
その時、朝のお日さまがやってきて、空に言いました。
「耳あか、たくさん取れるといいね。」
「はい、そうですね。」
「それじゃあ、あとで。」
「はい、たのしみに待っていてください。」
お日さまはにこにこしながら、とおりすぎて行きました。
 
ザックザックザァー、ザックザックザァー
きゃらくんの耳あか取りは、とても気持ちがいいです。空は、だんだんねむたくなってきました。
ザックザックザァー、ザックザックザァー
グースカピー、グースカピー。
きゃらくんの耳あか取りはつづきます。
ザックザックザァー、ザックザックザァー
 そうしているうちに、とっても大きな耳あかがあらわれました。
「空さん空さん、とっても大きい耳あかがありますよー。」
ぐっすり寝ていた空はびくっと目をあけて、じゅるっとよだれをふきました。そしてぼんやりしたままつぶやきます。
「大ひな耳あきゃ?」
「はい、そうです。これからうるさくなりますからねー。」
きゃらくんはリュックからドリルを取りだしました。
キュイーン、ドドドドド、キュイーン
トンテンカンテン、ザザザザザー
あまりのうるささに、空の目はぱちくり。
おねむりなんて、していられません。
キュイーン、ドドドドド
 しばらくすると、その音もやんで、ザックザックという音にかわりました。このザックザックがたまらない。
空はまた、ねむたくなってきました。ゆうらりゆうらり。よだれが出てきました。
 そんなことにはかまわず、きゃらくんは耳あかを取りつづけます。
ザックザックザックザック。
グースカピー、グースカピー。
 
ようやく右耳のあかを取りおわりました。次は、めんぼうのようにやわらかいぼうしで穴の中をきれいにふいていきます。それがおわれば、さぎょうはおわり。きゃらくんはさけびました。
「空さん、きれいになりましたよー。」
ぐーぐーねていた空はまたびくっとして、じゅるっとよだれをふいてこたえます。
「あひがとうごじゃいます。」
 
 きゃらくんは左耳もきれいにして、空に、あかをぜんぶ見せてあげました。空は言います。
「うわあ、たくさん取れましたね。たいへんだったでしょう。ありがとうございます。」
「お日さまもよろこびますね。」
「そうですね。」
実は、このきらきらかがやく耳あかは、お日さまの大好物なのです。
さっそく、
「耳あかをくださいませんか。」
と夕方のお日さまはりょう手をのばしてきました。空は言います。
「もちろんです。」
お日さまはぱくんとたべました。
「おいし~い。このあまさがたまらない。」
お日さまはにこにこです。耳あかをぜんぶ食べおわり、体はまっ
かっか。そして
「ありがとー。」
というと、ふんふんふんと山の向こうにしずんでいきました。
 
 月がひかり、星がかがやく夜になりました。空の体も黒色にかわっています。
 きゃらくんは雲の上にはらばいになって
「うーん、そこそこ。」
と言っています。
「へい、だんな。」
とマッサージしているのは空です。なぜか、しゃべり方がへんです。
「きょうはほんとうにありがとうございやした。とってもかゆかったので、たすかりやした。」
「いいってことよ。またかゆくなったらいつでも呼びな。取ってやるから。うーん、もうちょっと右かな。」
「へい、がってんしょうち!」
月がひかり星がかがやくそんな夜、ふたりのマッサージはつづきます。