雨を求めて
足の裏にはツボがあるそうだ。
ツボと言っても花瓶とかの壺ではない。
健康になるツボのことである。
タカシがツボのことを知った日は雨が降っていた。
どしゃぶりの雨である。
人はツボを刺激するとき手や道具を使う。
でもタカシは思った。
「そんな方法はなまぬるい。もっと効率的なものがあるではないか。」
それは雨のことである。
タカシは
「逆立ちして雨に打たれるのが最も効率的だ。」
そう思った。
タカシはすぐれたバランス感覚の持ち主で、支えがなくても逆立ちし続けることができる。
「外で雨に打たれよう。」
そう決心し、タカシは家を出た。
どしゃぶりの雨がタカシの頭や肩を刺激する。
「なかなか良いではないか。」
タカシは両手を空に向けると、
「エイヤッ。」
逆立ちをした。
程よく強く心地よく、無数の雨粒が足裏を刺激する。
「うーん、いい感じ。」
タカシはハマッてしまった。
以来、タカシは旅人になった。
足裏を程よく刺激する雨を求めて。
諸君、雨の中逆立ちする男を見かけたら、それはきっとタカシだ。
決して変人と思ってはいけない。
彼は真剣なのだから。