きたかぜコンサート
冬になり、きたかぜがまちにやってきました。きたかぜのなまえはプウ。きたかぜになったのは、ことしがはじめてです。プウは、
「かっこいいきたかぜになるぞう!」
とはりきっています。
プウはぷぷぷぷぷうとかぜをふきました。
するとどうでしょう。みんなさむそうなかおをして、おうちにひっこんでしまいました。
「あれえ。へんだなあ。うれしくないのかなあ。どうしてえ。」
プウは、みんながきたかぜをよろこぶとしんじていました。でもなにかちがうようです。
プウはためしに、山でもぷぷぷぷぷう、とふいてみました。そうしたら、木がざわざわざざざあ。木たちもやっぱりさむそうにブルブルふるえています。プウはおもいました。
「ぼくってきらわれてるのかな・・・。」
なんだかかなしくなって、プウはしょんぼりしました。
ぽとんとなみだがおちそうになったとき、いっぽんの木がはなしかけてきました。木は、
「ほっきょくにいくといいよ。」
といいました。
「ほっきょく?」
きたかぜがききかえすと、
「ほっきょくはさむいかぜがだいすきなんだ。きみがいけば、みんなよろこぶよ。」
そういって、木はにいっとわらいました。
ほっきょくにつきました。プウのまえには、まっしろいせかいがひろがっています。プウがきょろきょろしていると、おっきなどうぶつがドンッとだきついてきました。
「よくきたね!!」
そういったのはシロクマ。目をきらきらかがやかせてプウを見ています。
「まってたんだ。さいきんここはあつくてあつくて。きたかぜくんをまってたんだ。」
そういうと、プウをぎゅううとだきしめました。プウはうれしくなっていいました。
「ぼくのなまえはプウ。よろしくね。」
シロクマもいいました。
「ぼくのなまえはオフロ。よろしくね。ねえ、ぷううって風をふいてくれる?あつくてたまんないんだ。」
「もちろん!」
プウはぷぷぷぷぷうと、ちょっとやさしくふきました。するとどうでしょう。オフロはりょうてをひろげて、うっとりしています。
「ああ、いいきもち。もっとふいて!」
「いいよ。」
ぷぷぷぷぷう。
「もっともっと!!」
「じゃあ、これはどうだ!」
びゅうううう。
「う~ん、しあわせ・・・。こんなしあわせ、ぼくだけにはもったいない。みんなをよんでくるよ!」
クロはシロクマだけじゃなく、アザラシやセイウチもつれてきました。そして、
「この子はハル、この子はサクラ、この子はナツ。」
と、じゅんばんになまえをおしえてくれました。プウも、
「ぼくはプウ。きたかぜです。よろしくね。」
と、あいさつをしました。
みんなは目をきらきらさせていいます。
「プウ、かぜをふいて!すっごいつめたいやつ。ふいてふいて!」
プウはおもいっきりくうきをすいこんで、びゅびゅびゅびゅびゅーとふきました。
「ああ、なあんていいきもち・・・。プウ、もっともっと!」
びゅびゅびゅびゅびゅー。
「う~ん、たまんな~い。」
みんな、うっとりしています。プウはとってもとってもうれしくなりました。
プウはつめたいかぜをふきつづけます。びゅびゅびゅびゅびゅー。ハルやサクラはうっっとりしすぎて、
「ひゃー。」
とでんぐりがえしをしました。それにつられてみんなもでんぐりがえし。
プウもくるりくるりとまわりながらびゅびゅびゅびゅびゅー。いつのまにか、ほっきょくじゅうのどうぶつがあつまって、プウの風にあわせてでんぐりがえしをしています。
びゅびゅびゅびゅびゅー。プウが右にふけば、右にごろんごろんごろん。左にふけば、左にごろんごろんごろん。
そのようすはまるで、コンサートのよう。プウもうれしくて、オフロやサクラもうれしくて、みんなの心に花ばたけができたみたいです。
そうして、とってもたのしいきたかぜコンサートは、星のかがやく夜になってもつづいたそうです。