おだんごちょうだい | めむたんの絵本

めむたんの絵本

めむたんは、Amazonで絵本を電子出版しています。
タイトルは、「きみといっしょに」、「あのもんのなかに」等です。

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            おだんごちょうだい
 
 今日は十五夜です。たけちゃんのおうちでは、縁側におだんごやススキをかざります。そしてみんなでお月さまをながめます。
 たけちゃんのかぞくは全部で五人。おじいちゃん、パパ、ママ、たけちゃん、あかねちゃんです。たけちゃんは五才、あかねちゃんは三才です。
 
 十五夜の昼はなんとなくいそがしいです。ママはおだんご作りにせいを出し、たけちゃんとあかねちゃんはおじいちゃんにつれられてススキをとりに行きます。ものしりのおじいちゃんは、ススキでふくろうを作ってくれました。
 夜になりました。縁側には山もりになったおだんごのおさらが五つ。ススキのふくろうも五つかざられています。
 お月さまは天高くのぼり、明るくかがやいています。たけちゃんやみんなは、縁側にすわって、十五夜の月をながめます。みんなで
「きれいだねえ。」
「そうだねえ。」
と話しています。でも、あれれれえ。お月さまのうさぎがちょっとへんです。あれよあれよと言うまにまず耳がなくなり手がなくなり、さいごには足もなくなってしまいました。なんと、お月さまからうさぎがいなくなってしまったのです。
みんなで
「うさぎがいないよ。」
「どうしたのかな?」
とそわそわ。
しばらくすると、縁側にすわっているたけちゃんの足がこしょこしょくすぐったくなってきました。足が何かにさわっているようです。
「なんだろう。」
たけちゃんが縁側の下をのぞくと、まっしろいうさぎがちょこんとたっているではありませんか!それも一羽だけではありません。百羽はいるでしょうか。うさぎとうさぎがくっつきあって、ずらりとならんでいます。たけちゃんはおもわず、
「うさぎさんがいるよ!!」
とさけびました。みんながなんだなんだと、たけちゃんのそばにあつまりました。うさぎたちは、
「こんばんは。」
と言って、ぺこんとおじぎをしました。たけちゃんたちはびっくりぎょうてん!
「うわあ!!」
としりもちをついてしまいました。パパは、
「おれのうしろにかくれろ!!」
と両手を広げてみんなを守ろうとしました。
パパが、
「おまえたちはなんだ!!どこからきたんだ!!」
とさけびました。たけちゃんたちはパパのうしろから顔だけだして、うさぎたちを見ます。おじいちゃんだけが縁側にすわったまま、
「ほーう。」
と言ってうさぎを見つめます。
 
一匹のうさぎがお月さまをゆびさして言います。
「あそこでもちつきしていたら、おなかがすいちゃった。おだんごちょうだい。」
そう言って首をかしげて両手を差し出します。ほかのうさぎも同じように首をかしげて両手を差し出します。おじいちゃんは、もういちど、
「ほーう。」
と言いました。そして、
「ママさんや。月のうさぎがおなかすいたんだと。だんごをあげようかのう。」
と言いました。おじいちゃんのおちついた声にあんしんしたママは、
「はい。」
と言って、おだんごのさらを持ってきました。
パパは、ふーとためいきをつきました。たけちゃんとあかねちゃんも、こわくなくなりました。それどころか、この、ものがたりのようなできごとがとってもうれしくて、
「ぼくがあげる!」
「あかねもあかねも。」
とおねだりしました。なのでおだんごは、たけちゃんとあかねちゃんがあげることになりました。たけちゃんが、
「ぴっぴっぴ、みんないちれつにならんでね。ぴっぴっぴ」
と言うと、うさぎたちはおとなしくいちれつにならびました。そしてじゅんばんに、たけちゃんとあかねちゃんからおだんごをもらっていきました。
よっぽどおなかがすいていたんでしょうね。うさぎたちはおだんごをもらうと、すぐさまぱくん、と食べてしまいました。
「はいどうぞ。」
「ありがとう。ぱくん。」
「はいどうぞ。」
「ありがとう。ぱくん。」
あんなにいっぱいあったおだんごが、みるみるなくなっていきます。さいごのうさぎにおだんごをあげおわると、
「やったー、やったー。」
たけちゃんとあかねちゃんはおおよろこび。手をぱちぱちたたいてぴょんぴょんとびはねます。うさぎたちもつられて、ぴょんぴょんととびはねます。
 やがて、うさぎたちは、みんないっせいにぺこんとおじぎをして言いました。
「どうもありがとう。」
それから月に向かうと一羽ずつ、ぽーんとジャンプしていきました。
うさぎたちは、お空にかいだんがあるかのようにぴょんぴょんとびはねて、月に向かいます。そしてお月さまにつくと、じゅんばんにじぶんよりさきについたうさぎのかたにのっていきます。そうして、まず足ができてうでができて、やがて耳の大きいうさぎのかたちになりました。それからう~んとのびをすると、ぺったんぺったん、もちつきをはじめました。
おじいちゃんが、またまた
「ほーう。」
と言いました。それにつられて、たけちゃんたちも、
「ほーう。」
と言いました。
 しばらくみんなでお月さまを見ていると、そこからぽんぽんぽんと、なにかがとびだしました。それらはぽ~んととたけちゃんたちめがけてとんできます。そして、おだんごののっていたおさらにぽぽぽぽぽおんとのりました。さいごにひらひらと、ももいろの紙がたけちゃんの手のひらにのりました。
 ももいろの紙には、こんなことが書いてあります。
『おだんごをありがとう。とってもおいしかったです。
ぼくたちの作ったおだんごも食べてね。   月のうさぎより』
 おさらをみると、ももいろのおだんごが五つのっています。みんなで一個ずつぱくんと食べると、あまいにんじんの味がしました。
 月を見れば、大きなうさぎが、ぺったんぺったんもちつきをしています。
 たけちゃんたちはお月さまに手をふって、
「ありがとー。」
と言いました。
 そしてみんなは縁側にすわって、
「きれいだねえ。」
「そうだねえ。」
と、もういちど、お月見をしました。