からからことん | めむたんの絵本

めむたんの絵本

めむたんは、Amazonで絵本を電子出版しています。
タイトルは、「きみといっしょに」、「あのもんのなかに」等です。

絶賛発売中です!!

傘の上 雨のこびとが ダンスする
                  からからことん からからことん
 
この短歌にちなんだお話を書いてみました。
良かったら読んでみてください。
 
 
地球の中の奥深く、ダイアモンドを枕に寝ているこびと、とんでるくんがいます。
とんでるくんは光っているものが大好き。部屋の中はダイヤモンドだけではなく金やアメジストなど、きらきら光るものであふれています。彼は、光るものの中でも特にダイアモンドが大好き。だからダイアモンドを枕にして眠ることは、とんでるくんにとって、この上ない幸せなことなのです。
そのとんでるくんが、ちょっとした気まぐれで、生まれて初めて土から顔を出しました。その瞬間、
「うわ!」
と言って両手で目をふさぎました。
 しばらくそうしたあと、おそるおそる手を離し、空を見上げ、ためいきをつきました。
とんでるくんの目の前に、数えきれないほどの星がきらきらと輝いています。とんでるくんは、夜空に光る星々を知りませんでした。
「なあんてきれいなんだろう・・・」
とんでるくんは、うっとりしました。
そうやって長い間見ていたら、流れ星がひとつ、とんでるくんのそばに流れて来ました。
「なにしているの?」
星が聞きました。とんでるくんはうっとりと流れ星を見つめ、つぶやきました。
「きれいだねえ・・・」
星は目をまんまるにして言いました。
「きれい?ぼくが?」
「うん・・・」
「そんなにきれいかしら。」
「うん・・・。ぼく、ダイアモンドとか、きらきら光るものが大好きで、お部屋にたくさんかざっているんだけど、こんなにきれいなの見たことない・・・」
「きみのお部屋ってきらきらしてるの?ぼくもきらきらが好きなんだ。ちょっと見てみたいな。」
「いいよ・・・」
ふたりはお互いに自己紹介をして、とんでるくんの部屋に行きました。すると、今度は流れ星が
「うわ!」
と言って両手で目をふさぎました。
しばらくそうしたあと、おそるおそる手を離し、ためいきをつきました。
「なあんてきれいなんだろう・・・」
今度は星がうっとりしました。そして、ダイアモンドに写る自分の姿を初めて見て、
「ぼくってきれい・・・」
とつぶやきました。
それから流れ星は、部屋にある金などをひとつひとつ手に取ってながめ、とんでるくんに
「きれいだねえ・・・」
と言いました。そして、もう一回ダイアモンドに自分を写し、
「ぼくってきれい・・・」
とつぶやきました。
 流れ星は、もっとたくさん長い間、自分を見ていたいと思いました。だから、こう提案したのです。
「ぼくの夜空ときみの部屋、交換しない?」
「へ?」
「ぼく、自分がこんなにきれいだなんて知らなかった。もうちょっと見ていたいんだ。金とかもきれいだし。」
どうやら流れ星はナルシストになってしまったようです。とんでるくんはとってもびっくりしました。
「ぼく、星になれないしこの部屋も大好きだから、そんなことできないよ。」
「じゃあ、かわりばんこはどう?雨が降る日に交換するの。それと、ぼくが呪文を唱えれば、すぐに星になれるよ。」
「え、そうなの?」
とんでるくんは、腕組みをして考えました。とってもびっくりな提案ですが、星になってみたいとは思っていたので、
「いいよ。」
とこたえました。
星はパン!と手をたたきました。
「よし、決まり!今から呪文を唱えるからね。あ、それと、この部屋に戻るときは雨といっしょに下りてきてね。それが一番簡単なんだ。それから、人間の傘に落ちた時はからからことんとダンスしてね。そうしたら君が帰ってきたってぼくにも分かるし、こびとに直してあげられるし。」
「分かった。」
とんでるくんは大きくうなずきました。
「じゃあ、呪文を言うからね。」
星はすううっと大きく空気を吸うと、さけびました。
「とんでるがとんでる!!」
その瞬間、とんでるくんは一気に地球から飛び出して、きらきら輝く星となりました。
 
一週間後、雨が降りました。
星のとんでるくんは傘の上でおどります。
からからことん、からからことん。
そうするとナルシストの星も出てきて、二人でからからことん、とおどります。そうしてめいっぱい遊んだ後、次に雨が降る日まで、お互いの自分の部屋でくつろぐのです。