赤い実
たけちゃんは夢を見ています。
青い空の下、どこまでも広がる草原で、たけちゃんはかけっこをしています。向こうの方に大きな木が立っているのですが、そこまで行ってみたいのです。
たけちゃんはどんどん走ります。どんなに走ってもぜんぜん苦しくありません。もうすこし、もうすこし、そんな感じで走り続けます。
空はどこまでも青く、草原はさわやかな風を受けてやさしく波立ちます。おひさまはさんさんと暖かな光をたけちゃんにふりそそぎます。大きな木は枝葉を思い切り伸ばして、おいでおいでと言っているようです。
そんな夢を見ている時、ママがたけちゃんの様子を見に部屋に入ってきました。
見るとたけちゃんの布団がはだけています。ママはしょうがないわねと笑いながら布団をかけてあげました。そして、たけちゃんのおでこにそっとキスをしました。
「大好きだよ。たけちゃん。」
ママはたけちゃんの頭をなでなでします。
そんなことはつゆ知らず、たけちゃんは夢を見続けます。
空は青く、草原は風に波立ち、おひさまがさんさんとふりそそぎます。大きな木は枝葉を思い切り伸ばして、おいでおいでと言っているようです。
その大きな木が変化をしました。それまで緑のはっぱを広げていましたが、その間から赤い実が出てきました。それらはどんどん実って、たけちゃんがたどり着くころには数え切れないほどたわわに実っていました。
たけちゃんは走り続けたので、少しのどがかわいておなかもちょっぴりすいています。
赤い実はつやつや光り、とてもいいかおりがします。そして何よりおいしそうです。たけちゃんは実を食べてみることにしました。
カプッ。
『おいし~い。』
たけちゃんの口の中に、なんともいえない甘い果汁が広がります。それはやさしくあたたかく、なんだかママのようです。
『ママ!!』
たけちゃんは両手を空に向かって思い切りのばしました。
空はまっさおに澄んで草原はやさしく波立ちます。おひさまはたけちゃんにぽかぽか暖かい日差しをそそぎつづけます。
たけちゃんは快い眠りの中、ママになでなでされながら、ぽかぽかほんわかと暖かい夢を見続けるのでした。