短歌にちなんだお話を書いてみました。
雨雲の うえで青空 せいざして
「晴れ」というじを れんしゅうしてる
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今日は雨の日。
雨雲さんは暖かくなった地球を冷やしたり草木に水をあげたりと、大忙しです。空からの滴は地球の生き物にとって欠かせないものなので、雨雲さんは真剣にお仕事しています。
その雨雲さんの上で、の~んびりとお眠りしている人がいます。青空さんです。
青空さんは、今日のボクはなにもしなくてもいいんだと思っているみたい。そばに咲いている花で恋占いをしたりたんぽぽの綿毛を吹いてみたり、の~んびりの~んびりふぁ~です。
そんな時突然、
「コラ!!」
大きな声がしました。
青空さんがびっくりして起き上がると、青空さんのお母さんである空の女神さまが立っていました。怒りで顔はまっかっか。こわ~い雰囲気をただよわせています。
青空さんがおそるおそる、
「ママ、どうしたの?」
と聞くと、空の女神さまは言いました。
「な~にをの~んびりしているのですか!!することがあるでしょ!!」
空の女神さまはカンカン。でも青空さんはすることなんてちっとも分かりません。
「なにをするんだっけ?」
またおそるおそる聞いてみると、空の女神さまはおごそかに言いました。
「習字の練習。」
「へ?」
「『晴れ』という字の練習をしなさい。あなたがじょうずに『晴れ』が書けなかったら、ずっと雨降りなのよ。」
「?」
「雨の日も曇りの日も雪の日も吹雪の日も、いろんな日が大切です。それぞれに重要な役目があります。でもそれが長く続いたらみんなが困るのよ。」
そして空の女神さまはこうも言いました。
「あんまり言いたくないけど、今年の冬が寒かったのは、あなたの『晴れ』という字が汚かったからなのよ。」
「えー!!」
青空さんはびっくり!!
実は青空さんは去年の秋口までは別の名前だったのです。その名前ではすることがほとんどありませんでした。だから花を摘んで遊んだり蝶と踊ったりしてふわふわ過ごしていたのです。
ところがある日突然
「青空になりなさい。」
と言われました。そしてなにも考えずに、
「はあ~い。」
と言って青空になったのです。
その時に少し晴れのやり方を教わっていました。ですが、きれいな紅葉にみとれてしまって、聞いていなかったのです。だから、「晴れ」がうまく書けなければ晴れないなんて、そんなこと、あたまのてっぺんからすっぽり抜けていました。
空の女神さまはえっちらおっちら机と習字道具を持ってきました。そしておごそかに言いました。
「『晴れ』という字をかきなさい。」
青空さんは、まだ花占いをしていたかったのですが、ママの言うことにはさからえません。
しぶしぶ練習を始めました。
空の女神さまはずっとそばについて、
「そこははねる!!そこはもっとおおらかに!!」
と一生懸命。青空さんは涙がちょっと出てきましたが、
「はい、ごめんなさい。」
とかなんとか言いながら練習しています。
青空さん、「晴れ」という字が上手になるといいですね。
明日には上手になるでしょうか?
明後日くらいには上手になって、そして晴れるといいですね。