「人生は妥協の連続ですよ。人は妥協しなければ生きていけません。でもね、ひとつだけ妥協しない物を持たなくちゃね」
日本画家の小泉淳作さんが「私の履歴書」(日経新聞、8月)のなかで紹介されていた言葉です。
小泉淳作氏は、2001年に鎌倉・建長寺の天井画「雲龍図」、つづいて京都・建仁寺の「双龍図」(畳108枚分大!)、そして2010年には、歴史上一度も絵が描かれたことがなかった東大寺本坊のふすま絵を5年がかりで完成させた日本画家。
画壇に属することもなく、独自の画境を切り開いてきた「孤高の画家」として有名ですが、
絵が売れるようになったのはなんと還暦をすぎてから、有名な上記の大作は建長寺の天井画をてがけた70代半ば以降(!)
本業で生活できるまでは、副業でデザインや陶芸などの仕事をしていたといいます。貴重な収入源であったパッケージデザインで、企業から入る手直しにやむなく妥協する自分に嫌気がさしていたとき、物理学者の武谷三男さんがかけてくれたのが上の言葉。
妥協してはいけないもの、それは本業の絵なんだ。そう気付いて勇気づけられた、とありました。
「ひとつだけ、妥協しない物をもつ」
ずしん、とくる・・
欲張りすぎてないかな、と自分を振り返りました。
東日本大震災から今日で半年。あれから、精神的にも物理的にも「持ちもの」について思うことがあります。本当に大切なものは?それを大切にできているか?(それ以外のことに気をとられすぎてないか)
妥協、というと後ろ向きな響きがあるかもしれないけど、翻って、こだわらない潔さ、しなやかさとも。 譲らず通すところと、そのバランス。それに、生きていれば、思い通りにいかないことも、こだわってられないという状況だってあるはず。
前に書いた 手放すこと(「楽になりました」とたくさんの反響があって驚いた記事です)に通じるように思います。どちらも自分にはない視点で、はっとさせられる。
小泉淳作さんのことは父から著書を教えてもらって知りました。 GWの帰省のときに「言葉を書き留めたい」と借りて帰ったほど感銘を受けたのですが(★)、「私の履歴書」に登場されて嬉しかった。昨日やっと、一ヶ月分さかのぼって読破しました。
政治家の家に生まれ育ち、絵がなかなか認められず苦労をかさね、支え続けてくれた妻を本業がようやく軌道に乗りはじめた60代に亡くした小泉さん。その後70代で建長寺と建仁寺、80代で東大寺の歴史的な大作を任され、いまや日本を代表する画家、86歳。
作品と同様、媚びない文章も好きです。(けっこう辛口)
いつか、東大寺の桜のふすま絵が一般公開されることがあったらぜったい見に行きたい。どうかそんな機会がありますように。
*武谷三男さんは、(現)京大理学部で湯川秀樹さんらと素粒子論を研究された物理学者。ゴンタくんは物理だいすきで、湯川さんに多大なる影響を受けてます(★)ちょっと嬉しかった(?)個人的なポイント。
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