人が生きるって時計と同じだね
生まれた時は誰もがまっさらな気持ちで
傷もくもりもない綺麗な心のまま
動きだした心が電池のように
少しずつ少しずつ
微かな歪みや恐れを抱きながら
時は刻まれる日々
いつ力尽きるとも知れないままに
手探りの人生がそこに有る

不安を抱えながら
辛い困難と向き合いながら
いつしか遅れがちな時計の針のように
疲れきった毎日

ブランドのような高価な時計なら
いつも優雅に時を刻み
みんなから視線を浴びている
そんな人の人生なら
不自由なんて言葉は無縁かも知れない

華やかに表舞台を歩ける人生
毎日きらきら輝きながら
長い時を刻むに違いない

無造作に置かれた時計なら
そこに有ることさえ
時にはガラクタと同じ
普段は誰も気に止めないけど
カチカチと頼りない時を刻むだけの
ぼくはそんな時計に過ぎないね
いつの間にか弱ってしまった針は
刻々と遅れた時を刻みながら
社会の隅で埃を被り
力尽きる日を待っているに過ぎない

安物で飽きられてしまうだけの
いつ捨てられるとも知れない哀れな時計
それでも時を刻む事は忘れないよ
ゴミ箱の中に棄てられようと
粉々に砕かれようと
時を刻んだ人生には…
少しも変わりはない

古びて色褪せていても
ポンコツ同然のガラクタでも
大切なひとの為に時を刻みたい
人生って…
大切なひとの為に時を刻むもの
人生って…
愛せるひとが居ればこそ
命の鼓動を感じられる

きっと誰の目にも触れず
静かに力尽きるなら
それも人生…

誰にも看取られず
誰にも哀しまれず
誰にも気にされず
いつか消え行く運命

生まれてきた時のように
生きてきた人生のように

静かに胸の中の針は
役目を終えるに違いない
だから…
ぼくはポンコツのままでいいよ
愛さえ失わなければ
それでいい
止まりそうな針でさえ
幸せなんだろうね

そんな気がする…