運転過失致死罪(高齢の母親の誕生日祝いのために蕎麦屋を訪れていた日本人家族四人の内二人死亡、一人怪我)に対し、原因を「居眠り運転」ではなく、「高山病」などと主張し、SNSで「日本は彼らの家族(米兵の家族)、そして米国に謝罪すべきだ」などと謝罪要求する米共和党マイク・リー上院議員。

 

この議員さんは、どちらが被害者でどちらが加害者だと思っているのでしょうか?

 

そして禁錮刑3年なのに、原告側(米兵)の家族からの強い働きかけで、米国への身柄引き渡し後は僅か1か月で仮釈放となった。

 

一方、医療の専門家は、(居眠りではなく)「急性高山病」の主張に懐疑的な見方を表明しており、ドイツのハイデルベルグ大学高山病を専門とするペーター・ベルチ氏は、NYT紙対し、「この状況下では高山病による突然の意識喪失はあり得なかっただろう」と語っているそうです。

 
 

まず、事件の詳細をwiki からそのままご紹介します。

居眠り運転と裁判

2021年5月29日、アルコニスは妻と3人の子供を富士山への日帰り旅行から連れて帰る途中だった。彼はハンドルを握って居眠りをし、対向車線を横切ってレストランの駐車場に突っ込み、駐車中の車や歩行者に衝突しました。日本人の4人家族、老夫婦と娘と娘婿がレストランで母親の誕生日を祝っていた。

 

85歳の母親と54歳の義理の息子はこの事故で死亡し、85歳の女性の娘(死亡した54歳の男性の妻でもあった)は軽傷を負った。

 

 

アルコニスが運転していたミニバンの2人の乗員も、首と背中の痛みのために病院で広範な治療を受けた。

 

アルコニスは執行猶予付きの判決を受けることを期待して、過失運転で有罪を認めた。彼は謝罪の手紙を書き、遺族に160万ドル(2億3700万円)以上の超法規的賠償金を被害者の家族に支払った。

 

裁判で、アルコニスは「急性高山病」に苦しんでおり、事故の約5分前に「体が弱くなるのを感じ、車が車線を逸脱したが、すぐに修正することができた」と述べた。彼は「すぐに私の車を止めるべきだった」と付け加えたが、運転は続けた。アルコニスは、妻のブリタニーも高低差で吐き気を感じていたため、事故の直前に座席の背もたれに寄りかかって居眠りをしていたと述べた。

 

 5分後、アルコニスは、彼が「記憶を失った」ときに、彼の子供の一人と話し始め、居眠りが続いたと述べた。

 

2021年10月、静岡地裁は「アルコニスさんが眠気を感じたら車を停めるべきだった」として、過失運転致死傷罪で懲役3年の判決を言い渡した。アルコニスは判決を不服として控訴し、減刑を求めた。

 

2022年7月、東京高等裁判所の控訴審では、静岡地裁の懲役3年の判決を支持した。陪審員団は、アルコニスが居眠りをし、眠気を感じたときに車を止めなかったことを怠ったと述べた。

 

アルコニスは高等裁判所の判決を不服として控訴せず、2022年9月から投獄された。

 

米海軍の事故報告

米海軍は事故について独自の調査を行い、ニューヨーク・タイムズが入手した事故報告書の中で Military.com、リッジはハンドルを握って「居眠り」をし、彼のトヨタは道路を外れ、レストランの外で5台の車に激突したと述べている

(事故に対応した米軍憲兵によって完成された供述書)

 

事故報告書によると、アルコニスの妻ブリタニーは、対応した軍の将校に、夫は「車のハンドルを握って眠りに落ちた」と話し、2人とも「衝撃を感じて目が覚めた」と述べた。軍の初動対応要員は、「現場の証拠と集められた声明を検討した後...(アルコニスは)運転中に居眠りをしてしまった」

 

報告書によると、家族は事故現場で治療を受けることができ、アルコニスには怪我や苦痛の兆候は見られなかった。負傷の見出しの下には、アルコニスが運転していたミニバンの乗員のうち2人が、首と背中の痛みを訴えた後、日本の救急医療サービスによって診察され、病院で手当てを受けたと書かれている。彼らの名前は編集された。報告書は、名前が伏せられているアルコニスが負傷したと報告していることについては言及していない。

 

Military.com は、事故報告書が日本の検察官によってアルコニスに対して提起された起訴の根拠であったと述べている。

 

Ridge Alkonis Prison Sentence Strains U.S.-Japan Relations - The New York Times (nytimes.com)

 

居眠りを「急性高山病」などと苦しい言い訳

アルコニスは有罪を認めたが、彼は急性高山病(高地で見られる酸素濃度の低下によってめまい、疲労、頭痛を引き起こす状態)に罹患していたという主張に基づいて、寛大な判決を求めた。この診断は、彼の裁判での証言で初めて公表された。

 

主な証拠は、事故から丸1ヶ月後に行われた海軍の評価の一環としてアルコニスが受けた検査から得られた。一般開業医と神経内科医の2人の医師が、アルコニスを急性高山病と診断した。

 

裁判で米国政府の傍聴人を務めた米海軍将校の報告書によると、静岡地裁の裁判官は、アルコニスさん一家が車で帰路についた富士山の場所であることと、「高山病の症状は標高が下がるにつれて徐々に緩和される」ことを理由に、急性高山病の抗弁を却下した。

 

事故現場は海抜約1,000フィートで、アルコニスと彼の家族が出発した富士山駅の標高は7,000フィート以上ある。

 

同じ報告書によると、アルコニスは事故後、犠牲者の一人を閉じ込めた車を動かすのを手伝おうとしたと証言している。彼はまた、日本人の救助隊員が妻と話しているのを見て、「彼らの会話の通訳を手伝おうとした」と法廷で語った。

 

医療専門家は、急性高山病の防御に懐疑的な見方を表明しています。ドイツのハイデルベルク大学で高山病を専門とするペーター・ベルチ氏は、NYT紙対し、この状況下では高山病による突然の意識喪失はあり得なかっただろうと語った。(注13)

 

米海軍の給与と福利厚生の撤回

2022年12月、Navy Timesは、米海軍によるアルコニスの給与と福利厚生の撤回について次のように報じた。

 

34歳の海軍兵の家族は、彼の早期釈放を求めるようホワイトハウスに働きかけている。しかし、国防総省の高官は、日本の法的手続きを尊重すると述べており、先月、12月末に軍人とその家族の給与と福利厚生を打ち切ると発表。

 

アルコニスは、軍の給料をすぐに打ち切られるのを避けるため、未使用の休暇やその他の休暇に頼っていた。それがなくなると、軍当局は彼を命令違反の欠勤として分類し、給与の決定を下した。

 

上院議員(マイク・リー)らは、23年度連邦予算総括法案の第8145条に、海軍にアルコニスの「給与と手当」を維持するよう命じる文言を追加した。

 

米国への移送と無条件釈放

2023年12月、アルコニスさんは、ジョー・バイデン大統領、カマラ・ハリス副大統領、ジェイク・サリバン国家安全保障担当補佐官が日本政府と個人的に交渉した後、507日間の拘留の後、LAの連邦刑務所に移送された。

 

被拘禁者の移送に関する条約及び国際囚人移送計画に基づき、アルコニスは合衆国の拘置所に移送されたが、移送の際、政府高官は「彼は合衆国で刑に服し続ける可能性が高い」と述べたと報じられた。

 

しかし、司法省の職員が「仮釈放委員会の手続きには数ヶ月かかる可能性がある」と述べ、「日本でのアルコニスの実刑判決を見て、米国で何がなされたかを判断し、その後、彼の残りの刑罰がどうなるかを決定する」と述べたと報じられたが米国仮釈放委員会は30日足らずで釈放され、刑期の半分にも満たない状態で釈放された。

引用元:

Ridge Alkonis - Wikipedia

 

 

2023年3月5日の共同通信の記事より

■日米、受刑兵移送の可否協議 静岡3人死傷の交通事故で禁錮刑

 

日米両政府が、2021年5月に静岡県富士宮市で3人を死傷させたとして自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪で禁錮刑の判決を受けた米海軍兵について、米国への移送の可否を協議していることが分かった。

 

複数の外交筋が5日、明らかにした。米議会の一部には不当な拘束として早期移送を求める声があり、拘束が長期化すれば日米関係に亀裂が生じかねない事態となっている。

 

米兵は横須賀基地に所属していたリッジ・アルコニス受刑者(34)。一審判決によると21年5月、運転中に眠気を催して飲食店駐車場に突っ込み、富士宮市の男女2人を死亡させ、男性の妻にけがを負わせた。昨年7月に禁錮3年が確定した。

日米、受刑兵移送の可否協議 静岡3人死傷の交通事故で禁錮刑 | 共同通信 (nordot.app)

 

 

【怒り】日本で日本人2人を事故で死なせ禁錮刑のアメリカ人が本国移送直後に釈放…米議員は日本に謝罪要求 遺族は憤り

爽やかな笑顔を見せるアメリカ人男性。 

 

日本で禁錮3年の実刑判決を受けた、リッジ・アルコニス元海軍中尉。 

元中尉は2021年(5月、居眠り運転で駐車場に突っ込み、2人を死亡させたとして逮捕された。 裁判では、禁錮3年の実刑判決を受け服役。 

 

しかし、アメリカへの移送後、突然仮釈放され、家族と再会を果たした。 

 

この突然の仮釈放に、息子を失った遺族は失望している。 亡くなった男性の父親「悲しいことは間違いないよね」 

 

いったい何が起きたのだろうか。 

 

 

これまで元中尉の家族らは、アメリカへの身柄の移送を日本政府に求めるよう、バイデン政権に訴えてきた。 

 

 

 

バイデン大統領「われわれは決して諦めないことを約束します」 そして2023年12月、受刑者移送条約に基づき、米国で残りの刑を執行するため、受刑者の身柄を米国に移送。 

 

ところが、アメリカ移送からおよそ1カ月という異例の早さで仮釈放された。 

 

 

フジテレビ報道局の平松秀敏編集長は、この早さに疑問を呈する。 フジテレビ報道局・平松編集長「本当に信じられないというか、あまりにも早すぎる。(米側が)仮釈放をするために、身柄の移送を求めたと、そういう印象を受けざるを得ない」 

 

 

さらに、米共和党のマイク・リー上院議員はSNSで、事故の原因について、「過失ではなく病気によるもの」と主張し、日本に謝罪を求めた。 マイク・リー上院議員の投稿「日本は彼らの家族、そして米国に謝罪すべきだ」 

 

この投稿に、残された遺族は憤りを隠せない。

 

  亡くなった男性の父親「そんなこと言ったら怒るわね。親より先に子どもが死んだのだから、悲しいに決まってるじゃん。(事故が)なかったら、われわれも普通の生活があったんだから」 

 

条約に基づく移送だったものの、あまりに突然の仮釈放は、制度そのものを揺るがすものとなっている。

【怒り】日本で日本人2人を事故で死なせ禁錮刑のアメリカ人が本国移送直後に釈放…米議員は日本に謝罪要求 遺族は憤り(FNNプライムオンライン(フジテレビ系)) - Yahoo!ニュース

 

 

恐らく、日本政府がこの米兵の身柄を米国に引き渡した根拠は「受刑者移送条約」だけではなく、受刑者が在日米軍兵であったため「日米安保条約」に付随する、在日米軍人の「治外法権」を認める「日米地位協定」という不平等条約が根拠となっての措置だった可能性があります。

 

 

謝罪の手紙と160万ドルを遺族に支払ったということ(恐らく減刑を求めるための方便でしかなさそうですが)で、この元海軍中尉は「形の上では」誠意を示しているわけですが、事故原因を「居眠り運転」と認めず、「急性高山病」などと弁解するあたりが姑息で、亡くなった方や遺族に対して申し訳なかったと心底反省しているとは思えません。

 

この原告側の家族(妻がバイデン大領領に日本への身柄の引き渡しを要求するよう強く働きかけたという態度がまさにそれを物語っています。日本人の四人の家族の内二人を死亡させて一つの家族を不幸にしたおきながら、どういう神経なのでしょうか。

 

どちらが事故の被害者だと思っているのでしょうか?

 

仮に事故を起こしたのが在日米軍兵ではなく、日本人だった場合、亡くなった二人の方の遺族に対しては事故を起こした側の保険会社から保険が支払われるでしょうし、その金額によって、実刑判決ではなく「執行猶予」がつくなどで減刑となるということではないでしょう?

 

事故を起こした本人は事故直後に、ひしゃげた車に閉じ込められた人の救助に加わっており、「高山病」という言い訳は苦しい言い訳です。「単なる居眠り運転」でまちがいなさそうで、情状酌量の余地って全くないわけです。

 

日本で起こった犯罪・事故は日本の法律で裁かれて量刑が決まるのが当然のはずです。