「Gladiator」(米国2000年):リドリー・スコット監督 ラッセル・クロウ主演

から「Now We Are Free」 映画のラストシーンで流れていた曲です。

 

作曲者:Hans Florian Zimmer、ハンス・フロリアン・ツィマー(1957年~ )

ドイツ出身の作曲家。映画音楽の製作で知られる。

これまでに計12回のアカデミー賞ノミネート(内受賞2回)、計15回のゴールデングローブ賞ノミネート(内受賞3回)、計4回のグラミー賞受賞など、数多くの受賞経験を有する最も著名な映画音楽作曲家の一人。

 

映画のサウンドトラックより(4分13秒)

 

Gladiator 「 Now We Are Free 」 Cello by HAUSER (5分43秒)

 

 

「Gladiator」(米国2000年):リドリー・スコット監督 ラッセル・クロウ主演

 

ローマ帝国の皇帝マルクス・アウレリウス(リチャード・ハリス)は将軍マキシマス(ラッセル・クロウ)に自分の後継者として皇帝の座を譲ろうと考えていた。それを知った皇帝の息子コモドゥス(ホアキン・フェニックス)は父の愛が自らには向けられていないと思い父皇帝を憎み暗殺して、マキシマスは皇帝殺しの罪を着せられる。

 

(当時のローマ帝国の皇帝は必ずしも世襲制ではありません。皇帝を盲目的に世襲にしていたなら、ローマはもっと早くに滅んでいたかもしれません)

 

郷里のヒスパニアでマキシマスの留守を守る彼の妻と一人息子は、コモドゥスの差し向けた者達によって殺されてしまい、二人の遺体が焼かれて吊るされているというこの世の地獄のような光景を目にしたマキシマスはコモドゥスへの復讐を誓う。

 

マキシマスは囚われの身となり、奴隷身分となる。「スペイン人」という呼称の当代随一の剣闘士(グラディエーター)となり、民衆の人気を博す(これは皇帝をコロッセウムに引き釣り出すためだった?)

 

最後にマキシマスはコモドゥスとコロッセウムで剣と剣の闘いを行って宿敵を倒し、復讐を果たすというストーリー。

 

実際、ローマ帝国時代には、自ら大衆の人気とりのために”グラディエーター”となる皇帝もいたそうです。

 

 

ラストで、コモドゥスを倒した後、マキシマスは相手の剣に毒が塗られていたため、体を掠めた傷から毒が身体に回り、次第に意識が薄れていく中で、魂が風の様に故郷のヒスパニアの大地へと戻り、亡き家族の魂と再会するという印象的なラストで、流れていたのがこの曲です。

 

「復讐」を果たしたことで、漸くマキシマスは「魂の自由」を手に入れることが出来て、愛する人々のところへ帰って行くことが出来た・・これを「Now We Are Free」というタイトルで表しているようです。

 

 

登場人物についての解説:

■歴史映画のスペクタクル作品

日本では「エイリアン」(1979年)「ブラック・レイン」(1989年)などで知られるリドリー・スコット監督(1937年~)の代表作である「Gladiator」(2000年)は公開から23年となります。

 

「十戒」(1956年)や「ベンハー」(1959年)のような歴史映画のスペクタクル作品で、古代ローマ帝国の五賢帝の一人アウレリウス・アントニヌス皇帝の頃の「パクス・ロマーナ」時代が描かれています。歴史上の実在の人物を登場させている。

 

登場人物のうち、皇帝マルクス・アウレリウスと、その娘ルッキラ(次女)、息子コンモドゥス(6男)は実在の人物から名前をとっている。

 

●マキシマス

架空の人物。ローマ帝国の将軍、後にグラディエーターとなる。郷里はヒスパニア?(スペイン人という呼称から)

 

●皇帝マルクス・アウレリウス(AD121年~180年)

実在の第16代ローマ皇帝。ストア哲学などの学識に長け、良く国を治めた事からネルウァ、トラヤヌス、ハドリアヌス、アントニヌスに並ぶ皇帝(五賢帝)と評された。

 

対外政策ではパルティア(古代イランの王朝)との戦争に勝利を収めたが、蛮族への予防戦争として始めたマルコマンニ人(古代ローマに存在したゲルマン系 の民族の1つで、 ブリ族 や スエビ族 などと関係が深い)、クアディ人(ゲルマン系の少数民族の1つだったとされている)、サルマティア人(イラン系遊牧民)などへの遠征(マルコマンニ戦争)は長期戦となり、国力を疲弊させ、自らも陣中で崩御した(享年59歳)。

 

マルクス・アウレリウスは、彼の父方の一族であるウェルス家が属州ヒスパニア・バエティカのコルドバに所領を持ち、西暦1世紀頃からローマ中央でも知られた存在にまで台頭し始めた一族だったようです。

 

つまり、属州であるヒスパニア(スペイン)にルーツをもつローマ皇帝です。両親には二人の子供がおり、アウレリウス以外にコルニフィキアという姉がいた。

 

母ドミティア・ルキッラは、有力貴族のカルビシウス・トゥルス・ルッソの子であり、またその母の大ドミティアも親族の財産を相続した資産家であった。彼女は後に煉瓦生産の工房など、両親の財産を相続してウェルス家を更に富ませた。

 

父であるウェルス3世も元老院で法務官などの要職を歴任していたが、アウレリウスが3歳の時に病没。母ドミティアは再婚しなかったが、当時の貴族階級にとっての常として子供の養育は家庭教師や侍従達に任せていた。

 

一方で貴族としての優雅な生活で堕落しないように「宗教的な敬虔さ」と「粗食」を躾として教えられたという。アウレリウスは母親についての感謝を述べる手紙を書き残している。

 

父の死後、父方の祖父ウェルス2世に引き取られ、母方の曽祖父であるルキウス・カティリウス・セウェルスという人物が養育を行った。

 

叔母ファウスティナ・マイヨルの親族であるハドリアヌス帝の推薦を受けて、6歳の時に騎士名簿へ登録された。少年時代に騎士階級へ叙任された事については、全く例がない訳ではないが、極めて珍しい出来事であった。

 

更に翌年にはサリイという聖職の為の学校へ推薦されたが、入学規定を満たしていなかった彼の為に規定を改訂させている。

 

ハドリアヌスはアウレリウスを寵愛しており、ウェリッシムス(Verissimus)という渾名で呼んでいた。

 

マルクス・アウレリウス・アントニヌス - Wikipedia

 

 

●コンモドゥス(AD161年~192年)

ローマ帝国初の父親と祖父を皇帝にもつ皇帝となっており、映画で描かれているような浅薄な人物ではなく、父の在位中、AD172年のマルコマンニ戦争でマルクス・アウレリウスに随行。(映画の中では随行していたのは将軍マキシマスとして描かれていました)

 

AD176年には東部地方を巡遊し、AD177年にローマ史上最年少の執政官となり、その後、父とともに帝位についた、とあります。(映画では父皇帝を殺し、その後に皇帝になった人物としてコモドゥスが描かれていました)

 

彼は父親と祖父(父親を養子にした)の両方を前の2人の皇帝として持つ最初の皇帝でもあった。31歳という若さで亡くなっている。(映画ではマキシマスとコモドゥスは同じ日に同じ場所で亡くなっています)

 

コンモドゥス - Wikipedia

 

 

映画に登場するマキシマス将軍と皇帝コモドゥスは、実在の皇帝コンモドゥスを二人に割って作られたような人物設定で、恰も同一人物が二人の人物として描かれ、その二人を宿敵同士して戦わせる、という設定であったかのようです。

 

そもそも、何故コモドゥスはマキシマス本人ではなく彼の妻と彼の息子を殺させたのか、ということを考えてみると、最愛の者を惨い方法で亡くすこと、それこそが相手に地獄の苦しみを与えることだから。

 

コモドゥスは最愛の父皇帝を自ら手にかけてしまった、という、ある意味で地獄の中に自分で自分自身を突き落としたしまったことになるので、同様にマキシマスにも同じ苦しみを味合わせたかったのだろう、と思います。マキシマスを敢えて生かしておいたのは、同じ理由からでしょう。それが最後は自分にとっても命とりとなった。

 

 

■ルッキラ

映画のヒロイン役であるルッキラは歴史上ではマルクス・アウレリウスの次女で、成人して後にアウレリウスの共同皇帝となったルキウス・ウェルス(101年~138年 ハドリアヌス帝の養子、後継指名される)と結婚。夫ルキウス・ウェルスは27歳で死没。

 

”ルッキラ”の名前はマルクス・アウレリウス帝の母ドミティア・ルキッラという名前からとって名付けられているらしい。ヒロインのルッキラ役を演じたのはデンマーク出身のコニー・ニールセン。現在NY在住、とあります。

 

ルッキラの息子はグラディエーター”スペイン人”(マキシマス)をギリシャ神話の「ヘラクレス」に喩えて憧れますが、ギリシャ神話に出てくる英雄ヘラクレスとは、12神ゼウスと人間の間に生まれた半神半人です。


パクス・ロマーナの時代は「ストア学派」に代表される「知性」の時代であると同時に、剣闘士を見ることに人々が熱狂した、恰も神話に出てく英雄ヘラクレスのような肉体と精神の強靭な強さを追い求めた時代だったようです。

 

”Now We Are Free”というタイトルの”We”が誰と誰を指すのかと考えると、当然一人はマキシマスで、もう一人は・・お分かりですね。