「新・山本二三展」の途中、淀井敏夫(1911~2005)の彫刻作品を見ました。
淀井敏夫は、朝来市出身の彫刻家。針金と縄の骨組みに直接石膏を塗って型を取る技法を用い、細く、しなやかな線を表現した作風で知られています。東京美術学校(現:東京芸術大学)卒業後、二科会で活躍して理事長に就任。母校の学部長を務めるなど、後進の育成にも力を注ぎ、2001年に文化勲章を受章しました。
淀井氏は、朝来市が進めていた、美術作品を自然を調和させる「芸術の森構想」に共感し、彫刻など125点をあさご芸術の森美術館に寄贈。美術館は1999年、淀井作品を常設展示する形で開館しました。
それでは、時系列順に作品を見ていきましょう。今回は1作ずつ、独自の解説を添えてみました。
《労人》1949年
第34回二科展出品作。筋肉隆々で、労働者らしさを見事に表現した作品です。
《座像》1954年
第39回二科展出品作で、二科会会員努力賞を受賞。年譜によると、この頃から石膏の直付け技法を始めたようです。
《キリンと女》1956年
淀井氏は、争いごとをしないキリンを平和の象徴ととらえ、好んで作品に用いました。ここでは、キリンと女性が共存する様子を表現しています。
《女・夏》1958年
スタンダードなブロンズ像。この頃、既に石膏による直付け技法を行っていましたが、女性の体型はまだ健康的です。
《サッカラの道》1966年
1965年、約40日間にわたって、エジプト・ギリシア・ヨーロッパを旅行。この作品は旅の思い出を再現した作品です。サッカラは古代エジプトの時代からある巨大な埋葬地。ロバが曳いているのはラクダの死体と思われます。
《ナイルの子供たち》1973年
1972年、約40日間に渡って、エジプト・ギリシア・ヨーロッパを旅行。中でもエジプトをモチーフにした作品が多く、何か惹かれるものがあったようです。
《砂漠の子供》1974年
《ナイルの子供たち》の類似作品。対象を絞った分、顔の表情まで細かく造りこんでいます。
《ナイルたそがれ》1976年
2度に渡る海外旅行は、淀井氏の作品に大きな影響を与えました。この作品も、おそらくナイル川沿岸を歩いた時の光景を再現したものと思われます。
《二匹のキリン》1976年
上野動物園にいるキリンの親子をモデルにした作品。淀井氏のキリン好きは相当なもので、生まれたての頃から足繁く園に通ってスケッチを重ね、子キリンに関する記事は全てスクラップにするほどでした。
《放つ(大)》1981年
風船を飛ばす少女。細長い像は、スイスの彫刻家、ジャコメッティ(1901~66)を思い出させます。
《少女・なわとび》1986年
跳んでいる瞬間を捉えた作品。縄が頭上にある作品とセットで「なわとびシリーズ」にしたら良いかと思いますが、どうでしょう。
《まりと少女》1987年
《少女・なわとび》の類似作品。モデルの女の子は同じでしょうか?
《ナイルの夜明け》1992年
朝日を拝む男女。神々しい姿を表現したかったのか、彫刻に金箔を塗っています。
《希望》2019年
JR姫路駅北側に設置されていた少年少女像《希望》を繊維強化プラスチックで作り直した、ブロンズ彫刻作品です。2019年、あさご芸術の森美術館開館20周年を記念した展覧会「淀井敏夫展 伝え、紡いだもの」で公開されました。彫刻の高さは約5m!開放的な空間を演出しています。
つづく