ファルコンは一仕事終えると、ヨンが要る筈のアジトへと帰ってきた。
そこは暗く、人の気配すらなかった。
『まさか、掃除をしたのか?
とすると、ヨンとテヒョンは何処だ?』
携帯を取り出すと、テヒョンへと電話をかけていた。
「俺だ。
どこにいる?」
『テサンさんの指示で、ヨンさんを彼の元に送り届けている最中です。
ファルコンはどちらに?』
「アジトだ。
掃除でもしたのか?」
『はい。
実はよりにも寄って仲間内での探り相をした者が出ました。』
「ハッ!バカらしい。
それでか。解った。俺もそちらに向かう。
送り届けたら、テサンのマンションを処分してくれ。
新しい所に移る。」
『解りました。』
電話を切ると、ファルコンはその場を後にし、テサンとウンスの居る病院へと向かった。
「ウンス。」
ウンスが患者の腕を縫合している後ろから声をかけていた。
「テサン、ちょっと待ってて。
はい。おしまい。
お母さん、傷口は常に清潔にしておいてください。
お風呂は控えて。
一週間後に外来で抜歯をしてください。
今晩は、熱が出るかもしれないので解熱剤を出しておきますね。」
ウンスが話をして居る間に看護師は、患者である子供の腕に包帯を巻いていく。
「ありがとうございます。」
付き添いの母親に所注意を伝えると、患者にもういいわよと待ち合いの廊下へと促していた。
ウンスは振り返り、テサンへと視線をあげていた。
「お待たせ。何?」
「相変わらず子供の扱いがうまいな。」
「あなたもでしょ。」
「ヨンとファルコンがここに来る。」
「えっ⁉」
ウンスの瞳には驚きと、ヨンに久しぶりに会える嬉しさが現れていた。
「どうする?親たちに会わせるか?」
テサンはウンスの様子に、半分笑いながら答えていく。
「会わせてもいいの?」
「お前の親だ。お前が決めろ。」
テサンはそれだけ言うと、処置室を後にしていた。
ウンスはヨンに会えることと親に紹介ができることに心を踊らせていた。
それは有る意味親との決別をも意味することを忘れていた。