ウンスは寝台に横になりながら、窓の外へと目線を動かしていく。
そこには、遠くから迫り来る黒い雲が今にも王宮の上を、覆うように広がりだしていた。

「雨が降り出す。」
「医仙、具合はどうですか?ああ、そうですね、降りそうですね。」
「チャン先生、何の目的でキ・チョルは此の高麗に来たのかしら?」

チャン侍医は、ウンスの脈を見ると腕を上掛けの中に戻し、かけ直す。
ウンスと同じにように、窓の外へと目線を動かしていく。

「さあ、私には考えも及ばない事ですが、しかし、・・・」
「チャン先生?」
「良いことではないのは分かっているかと。」
「そうですよね、私が戻ってきていることが元に伝わるにはまだ早いし。」
「元が無理難題を言って、戦を仕掛けてくるために探りを入れに来たか?」
「或いは、王を代えるため?」
「何はともあれ、少しお休みください。
でないと、怒られそうです。」
「誰にです?」
「テサン殿です。」

二人は顔を見合わせるとクスクス笑いながら、ウンスは瞳を閉じチャン侍医は、警護の様子を確認していた。



シャインは自分があてがわれた部屋へと、
廊下を歩いていると、部屋の入り口で壁に寄りかかり、目を閉じて立っているファルコンを見付けた。

「ファルコン!
どうしたの?考え事?今、ウンスはいないから入って。」

部屋の中へ入ろうとするシャインの腕をファルコンは掴んだ。


「何のつもりだ?」
「何の事?」

首を傾げながら、シャインは自分の腕を掴むファルコンの手に、反対の手でそっと重ねる。

「ムガクシだ。」
「ああ、面白そうじゃない?ウダルチとムガクシの戦力トーナメント戦。」
「本気か?」
「冗談よ。さぁ、中に入って。
お酒でも呑もうよ。」

ファルコンは無言でシャインの後について、部屋の中へと入って行った。