『芥川龍之介随筆集』 岩波文庫
澄江堂(芥川の号)で書いた随筆の中に「とても」という言葉について書かれた章がある。
「とても安い」とか「とても寒い」とか云う「とても」が東京の言葉になりだしたのは数年以前のことである。従来の用法は「とてもかなわない」とか「とても纏まらない」とか云うように必ず否定を伴っている。」
「肯定に伴う新流行の「とても」は三河の国あたりの方言であろう。現に三河の国の人のこの「とても」を用いた例は元禄四年に上梓された「猿箕」の中に残っていた」
言葉の変遷や用法の変化について、芥川らしい繊細な分析している。こうした点も芥川の衒学的な魅力の一つであろう。
最近の意味のわからないカタカナ言葉、短縮語、意味が反対になってしまったような言葉を芥川ならどう評価しただろうかと思う。
他には「萩原朔太郎君」というエッセイもあるが、こちらはほぼ常識的な朔太郎論で、芥川にしては平凡のように思った。
『日本経済低成長からの脱却』松元崇著 NTT出版
失われた30年と呼ばれた日本経済の低迷について、どうしてそうなったのか、今後どうすべきかを著者なりに論考したものである。
経済成長の要因には①技術革新②資本③労働力の三つがあり、この三つがうまく回らないと経済は成長しないという。
今後の成長のためにはどうすればよいのか、著者の主張は、科学技術力を経済成長に結びつけるための投資が肝心であるというのがその根幹をなすものであろう。最近、半導体関連工場が政府の援助もあって熊本や北海道に一大拠点を広げつつあるのも、こんな観点からなのかと今後の日本を見守りたいと思う。
『マホメット』井筒俊彦著 講談社学術文庫
後日詳述予定
『智恵子抄』高村光太郎著 新潮文庫
後日詳述予定
『鏡子の部屋』三島由紀夫著 新潮社
3月29日既述
『女系天皇』工藤隆著 朝日新書
3月18日既述
今月は比較的少ない読書量である。今、平野啓一郎の『三島由紀夫論』に挑戦しているからである。難解でほとんど前に進まない。一日僅か数ページである。かなり時間がかかりそうだ。