こんな本を読みました。(十二月)
『本居宣長』先崎彰容著 新潮選書 副題に「もののあはれ」と「日本」の発見、とある。本書は、本居宣長の人生を辿るとともに、その「もののあはれ」論を分析・考察する少し難解な論考である。ちなみに著者は倫理・思想史家である。「もののあはれ」とはいったい何を言うのだろうか。 著者によると、「「日本」成立以前の奥深く、太古の息遣いさえ聴こえてくるような時代の人々の佇まい、鼓動こそ「もののあはれ」である」と言う。 つまるところ、わが国は古代から支那、朝鮮の文化の大きな影響下にあったが、わが国にはわが国固有の文化・思想・情緒があり、その核心にあったのが「もののあはれ」であったというのが宣長の主張であるようだ。 宣長の源氏物語論である「紫文要領」にも言及しているが、源氏物語と「もののあはれ」はどんな関係があるのか。こんなことが書いてある。 「やむにやまれぬ深い情欲があるので、特に不倫はのめり込んでしまう。人情が深く切実になればなるほど感情のこもった歌が沸き上がって来る。源氏物語や狭衣物語があわれなのはこうした理由による」 はかなく、それゆえに永遠不滅を願う男女関係に価値を見出した宣長独特の思想というべきであろう。 最近続けて読んできた、夏目漱石の小説も男女の心の機微を掘り下げた切実な物語であった。これらの小説の基底部にも、日本固有の「もののあはれ」が脈々と流れていると感じてしまうのである。 『門』 夏目漱石著 岩波書店漱石全集 12月10日 既述 『強権に「いいね」を押す若者たち』玉川徹著 青灯社 12月14日 既述 『仮面の日米同名』春名幹男著 文芸春秋新書 12月18日 既述『松下政経塾憂論』江口克彦・東海由紀子 宝島社 12月26日 既述