我が国における魚類養殖の歴史は昭和初期、香川においてハマチの養殖に成功したのがその始まりとされている。仕切りに掛かる高額な経費や、赤潮などの海洋環境による影響など、当初は様々な困難があったが、技術の研究・開発の歴史を繰り返すことで、戦後の高度経済成長期を契機に他種の魚についても養殖が進んでいくこととなった。現在では国内生産量の2割前後を養殖魚が占めるといわれているが、種類は割合の最も高いハマチをはじめ、タイ・ギンザケ・フグ・ヒラメなど様々である。
魚の養殖においては、近親交配の懸念(天然マダイでは100万匹の稚魚を生産するのに必要とされる親マダイが数万匹であるのに対し、養殖の場合は50匹で済むため、遺伝的多様性の程度を低下させる可能性があるとされている)や、病気を防ぐための人工的な投薬による成魚への影響、魚網の衛生管理など、昔から数々の問題点が指摘されてきた。しかし現在においては技術革新や法整備などによって、養殖環境の改善が日々進められている。食品の安全性に対する消費者の関心も強いだけに、業界内で行われているトレーサビリティーやHACCPといった取り組みは今後においても重要な経営要素となるだろう。
養殖魚についても天然物と同様に輸入品の台頭が著しいが、需給バランスの調整や生産コストの増大などによって価格は全般に高めで推移している。最近ではBSEや鳥インフルエンザの問題による食肉への消費不安が影響し、欧州を中心に需要が伸びていることも卸値の高騰につながっているようだ。漁獲量の低下に対応する形で、食卓への安定した魚の供給を目指す意味においては今後も必要不可欠な技術であるが、徹底した安全管理の下、消費者に対して品質の高さをPRしていく努力を通じ、国内需要の増加や海外輸出の拡大へとつなげたい。
マグロの漁獲削減による流通量の減少が懸念されている状況だが、高級魚であるミナミマグロに続いて低価格で売られているキハダマグロ、メバチマグロも大幅に漁獲量を減らされる見込みとなったことで、マグロが庶民の口に入りにくくなる心配も出てくるようになった。養殖魚の普及が頼みの綱となることまで考えられるが、マグロは回遊魚であるため、限られたスペースで育てることが非常に難しいとされている。マグロの養殖技術進歩に向けた研究は長い年月を掛けて続けられており、本格的な実用化がなされる日も近づいているというが、他の魚も含めて漁獲減をカバーするべく安定して供給されるよう、養殖産業にかかる期待は年々大きくなりつつある。
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