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工場で蒸し焼きされた後、水槽内で冷やされるプリン(モロゾフ提供)(写真:産経新聞)
洋菓子のモロゾフの定番商品として、ロングランの人気を誇っているのが「カスタードプリン」。今年、誕生50周年になる。その人気の秘密は、プリンのおいしさはもろろん、じつはその容器にある。デカくて重いガラス製のカップなのだ。この素材革命の時代に、なんでまたガラスなのか…と思ってしまうが、「かつてプラスチック製に代えたところ、売り上げが1割もダウンしてしまったことがあり、プリン=ガラス容器は当社の鉄則なのです」と同社広報。ガラスにこだわり続ける理由は何なのだろう。
「デカい、重い。でも、ガラスの容器に入っているのがモロゾフのプリンと、お客さまに親しまれています」と、同社製品開発専任課長の大門弘典さん。同社のプリンは昭和37年、東京・銀座の「東京日石ショップ」で、喫茶限定メニューとして発売したのが始まり。当初、湯飲みのような陶器に入っており、1日数十個しか焼けなかったため、「人気商品で、食べられないお客さまもいたのでは」(同社広報)という。残念ながら、その後「持ち帰り用」として商品化した経緯は資料が残っていないため、定かではないが、ガラス容器に入れて焼くことで、48年に工場での量産化に成功した。
これで広く出回るようになり、当時、神戸の女子大生の間で「デカプリン」の愛称でブームとなり、その後、全国で親しまれる商品となったという。それ以来、同社は容器を4回改良した。しかし、ある特徴は変わらない。それは丸みを帯びた胴体と、底のわずかなへこみ。同社広報は「揺れてもカラメルソースが上に上がってこないことと、割れにくいこと」と説明する。今年5月に発売50周年を記念した改良では、「初代プリンの懐かしいシルエットを復刻しました」(大門さん)という。ガラスの厚みや強度によって、火の入り具合いやプリンの固さが変化し、それは味に直結する。容器とはいえ、けっこう難しく、“合格”へのハードルは高いそうだ。
また、今回の改良ではガラスの厚みを少し薄くして軽量化した。やはり「持ち帰り用」となると、重さはネックになる。誕生以来2回目の軽量化で、初代の188グラムは今回139グラムになった。今回の容器の開発には1年半もかけたそうで、「軽量化は永遠のテーマ」と大門さん。それなら、そこまで苦労しなくても、扱いやすいプラスチック容器に代えればいいのに、と思ってしまうが、それがそう簡単にはいかない。同社には苦い経験がある。60年のこと。「透明な容器にモロゾフの刻印」。ほぼ見た目が同じプラスチック製カップを採用し、福岡地区の主要百貨店でテスト販売したところ、思わぬことに売り上げが1割もダウンしてしまったのだ。
わずか数カ月でプラ容器は無念の“挫折”となった。やはりモロゾフのプリンはガラスの容器でないとダメだったのだ。大門さんは「ごっついガラス容器から、プルンプルンと震えるようにプリンが出てくる。そのアンバランスが楽しいのでは」という。さらに、あるイベントで「プリン容器の再利用法」を調査した結果、意外なことが分かった。透明で小ぶり、そして丈夫なガラスカップとあって、食べた後、お茶をいれるグラスやアクセサリー入れなど、さまざまな用途に再利用されていたのだ。
広報の村岡扶美さんも「観葉植物を入れたり、会社のデスク上の花入れに使っています」という。どうやら、かわいらしいインテリアとしての価値があるらしい。同社ではチョコレートが売り上げ全体の3割を占める大黒柱。プリンは1割足らずだが、50周年の今年だけは、こだわりの詰まったガラス容器に入って並ぶプリンが売り場の主役になっている。
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