地域のウォーキングマップに載っていた火山灰層を見に行ってきました。
姶良火山灰露出地層と記載があります。
この火山灰は、AT火山灰という名前がついています。
AT火山灰は、鹿児島県錦江湾の最奥部にある姶良カルデラで、約3万年前に起こった巨大噴火によって空に舞い上がった火山灰が、風によって遠くまで運ばれて堆積したものです。
AT火山灰は、最初に神奈川県の丹沢山地で発見され、「丹沢軽石」と名前がつけられました。しかし、その後の研究で、姶良カルデラが給源だとわかり、AT(姶良丹沢)火山灰と名づけられたという経緯があります。
巨大な噴火が起こると、広い範囲に火山灰が堆積するため、地層の年代を決める重要な鍵層となります。広範囲に堆積した火山灰は、広域火山灰と呼ばれます。
また、鍵層として役立たせるために、火山灰が堆積した正確な年代を知る必要があります。
AT火山灰についても、放射性炭素年代により、2万6千年前~2万9千年前という年代が出されていました(たとえば[1])。しかし、近年では、年縞堆積物により、より正確な年代が出され、約3万年前[2]という年代が示されています。
年代決定のもとになったのは、福井県にある水月湖の底にたまった地層です。
ボーリングによって取り出された地層を、7万年分、1枚1枚数えるという途方もない研究により、様々な過去の現象の正確な年代が決定されました。
最近、その研究成果を紹介する博物館がオープンしました。また、研究の過程を臨場感のある文章にまとめた本も出版されています。興味のある方は、ぜひ!
◆時を刻む湖――7万枚の地層に挑んだ科学者たち (岩波科学ライブラリー)
前置きが長くなりましたが、観察した露頭について書きます。
場所はここ(34.0104, 131.22897)
風化した花崗岩の上に、白色の層が乗っています。
白色の層については、
・全体として1mを超える
・細粒
・下部のほうは、茶色でより細粒なものが不明瞭な筋状に入っている。上部のほうに行くにつれ、茶色い筋は白色の部分との境界がより不明瞭になっていき、全体として薄茶色になっている。
・茶色い筋のいくつかは、数mmの厚さがあり、よく固結して明瞭な筋として残っている。
という特徴がありました。
果たして、これはAT火山灰なのか?ということを自分なりに確認するため、少し試料として持ち帰り、観察をしてみることとしました。
これについては、またの記事で!
また、この露頭とは、道路を挟んで反対側に、風化した花崗岩が露出していました。
場所はここ(34.01023, 131.22896)
手で触るとボロボロ崩れるほどで、花崗岩の風化に触れることのできるいい露頭だなと感じました。
今後の露頭探しには、地域のマップも活用していきたいなと思いました。
また、風化した花崗岩とAT火山灰の境目は、約3万年前のある日の地面を示しています。
現在の生活に置き換えて、遠く離れた火山の噴火によって地面に一気に数十cmの火山灰が降り積もることを想像すると、劇的な環境変化だっただろうと推測できるかもしれません。
本文中注釈
[1] 奥野充. (2002). 南九州に分布する最近約 3 万年間のテフラの年代学的研究. 第四紀研究, 41(4), 225-236.