少し時間が経過してしまいましたが、6月初旬以下の報告会に参加してきました。ブログでの掲載は、主催者の指導教員と話題提供者より許可をいただいております。
第1回 北方研究教育センター・サイエンスカフェ主催
「ツンドラカフェ
~ウイルタのおばあちゃんと暮らした1年~」
話し手 山田 祥子さん (北海道大学大学院博士課程)
日時 : 2011年6月4日(土) 14:00-15:30 (北大祭開催期間)
場所 : 北海道大学人文・社会科学総合教育研究棟
大学祭に合わせて先住民アートを展示中
このチラシは、決して間違ったわけではありません
チラシ
予備知識(WIKIPEDIA より)
ウィルタ (UILTA, Orok) 民族は、樺太 (中部以北)の先住民族 で、ツングース 系である。アイヌ からはオロッコ (Orokko) と呼ばれた。本来の言語はツングース 諸語の系統であるウィルタ語 である。
サハリンにはウイルタと呼ばれるツングース系の人々が暮らしています。その人たちが作り出すうず巻きや幾何学の美しい文様のほどこされたウイルタアートに触れ、ウイルタ式チャイを飲みながら、ウイルタの暮らしや文化についての話を聞きました。
お話をしてくださったのは、北大大学院博士課程で研究中の山田さんで、山田さんはじっさいにサハリンのノグリキという地域の市民宅に滞在して、直接お話を伺っています。山田さんの本来の研究分野は言語学(ウィルタ語の分析)です。そのため、生活から繰り出される言葉の研究のために、地域密着の聞き取りをを目指しました。
ウィルタ族は、シベリアに暮らす30以上の先住民族の中の一民族です。ノグリキには、ウィルタ族、ニブヒ族、エヴェンキ族と呼ばれる人々をを中心に12000人ほどが暮らしています。勿論、それぞれ固有の言語を持っています。しかし、そのような地域でも、ウィルタ語を読み書きし理解できる人は、老人を中心としてわずかしか残っていません。調査の時点で64人といわれていました。
産業としては、石油・天然ガスの産出、トナカイの飼育、イチゴやベリー類の育苗、民芸品作りが主なものです。
楽器の紹介
数々の民芸品
この地域には、ウィルタ風エコスタイルとも呼ぶべきライフスタイルがあるとのことです。気候に合わせて、畑で作物を育て、コマイ釣りを行い、厳寒期にはそれらを上手に保存食として活用し、先祖から受け継いできた伝統工芸技術を使って、刺繍や白樺細工、革工芸などを行っています。もちろん時代に合わせ、また輸出を意識して現代風にアレンジするなど、工夫が凝らされています。
お話を伺った人の一人、エレーナ・ビビコワさんの生活は、春・夏は、育苗から始めて、多くの時間を畑づくりに費やしています。同時に、ブリザードが吹き荒れる秋・冬に備えて、冬支度に余念がありません。この時期には保存食作り、ベリーでのジャム作り、魚の塩づけ、燻製、衣類の準備。畑づくり以外の時間は、少しずつ集めた白樺の皮、トナカイやサケの皮、ビーズを使って民芸品を作っています。作った製品のうち、木彫りの人形などはお守りとして用いています。大半は観光土産や輸出用の製品です。
ビビコワさんの作品は、娘さんが経営している民芸品店に並べられているということです。
ソ連時代の文化の断絶は、伝統文化の継承も困難にしましたとイリーナ・ファジャエーワさんは言います。ツングース系の民族の結合(たとえば結婚)には・・・・・ねばならぬという禁忌が多い。継承の問題もそれぞれの州に任されており、今後の教育の取り組みにかかっているそうです。
ノグリキ郷土博物館では、大人も子供も対象にウィルタ語教室を開いています。今はウィルタ語の教科書も作られており、正規授業が行われています。ミナト・シリュコさんは北方民族技術学校で伝統技術を教えています。
ウィルタ語の教科書 表紙
表音文字が掲載されたページ
この後一階の別フロアーで展示中の民芸品を見学しました。
一般の学生に交じって見学
特徴のある渦巻き模様の刺繍
白樺細工のペンダント(ニブヒ)
動物の毛皮と刺繍(ニブヒ)
ペンダント:ビーズ、魚皮(ウィルタ)
額絵:トナカイの皮(ウィルタ)
女性の衣服
この後は、ロシアのチョコレート、クッキー、チャイに木イチゴやブルーベリーのジャムを添えてお茶の時間を楽しみました。残ったジャムはぜひお持ち帰りくださいということで、michiruも小瓶を頂いてきました。(この日の為にロシア製が十分手に入らず、ノルウェー産のものもありました。味はよく似ているそうです。)
ロシア産のものは、まだまだレアーなんですね。