今日は慰霊の日。
追悼の意を込めて、『STAR SAND 星砂物語』と言う作品の感想を
書かせていただきます。
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2017/日本・オーストラリア
舞台は終戦間近の沖縄。戦争の気配を微塵も感じさせない遠く離れた小さな島の洞窟で、脱走した日本兵岩淵、同じく脱走した米兵ボブ、そして数か月前からこの島に住み着いた16歳の少女洋海が出会ったところから物語は始まります。
敵兵にも関わらずボブを助けたいと思う岩淵に、脱走兵を匿うと罪になるにも関わらず二人を世話する洋海。そんな二人に心から感謝するボブ。自然と三人の心の距離は縮まって行きます。
この作品の面白いところは、戦争映画にも関わらず戦場のシーンは一切ありません。
愛する家族を戦争で失ったギボさんは体中で慟哭し、国家教育による洗脳なのか、岩淵の兄はじめは脱走兵は家族でも許さないと呪詛のように吐き続け、悪魔のような目で弟を睨みつけます。
見えないけれど確かにそこにある戦争を、役者さんは演技とセリフで私たちに伝えるのです。
中でもギボさん演じる寺島しのぶは別格で、娘が戦火に飲まれたのを訴えるシーンでは、友人曰く「火(柱)が見えた」とのこと。言い得て妙。それくらい鬼気迫るものがありました。
その後監督のロジャー・パルバースと岩淵を演じた県出身者の満島真之介によるトークショーがあったので、作り手たちの作品にかけた思いをより一層知ることが出来たのはよかったです。
これはただの戦争反対を訴えている作品ではない。愛があれば国境なんか関係なく、もちろん敵も味方もなく、人は繋がりあえる。それを訴えたかったようです。
『All You Need Is Love』だね。
海の向こうの国ではたくさんの人が戦争に苦しめられていて、他国は虎視眈々とこちらをミサイルで狙っており、国のトップは着々と参戦できる準備をしている。現在の日本は今でこそ戦禍にはさらされてはいませんが、いつ戦争に巻き込まれてもおかしくなく、作品と同じように見えないけれど確かにそこに、遠くない未来に、戦争は存在しているかもしれません。