もうひとりの息子
2012/フランス
監督:ロレーヌ・レヴィ
出演:エマニュエル・ドゥヴォス、パスカル・エルベ、ジュール・シトリュク、メディ・デビ、カリファ・ナトゥール、アリーン・ウマリ

あらすじペン
イスラエルで暮らすフランス系ユダヤ人家族の一人息子ヨセフ(ジュール・シトリュク)は、兵役のために健康診断を受ける。その結果、医師である母親(エマニュエル・ドゥヴォス)は、息子とは血がつながっていないという衝撃の事実を知ることに。ヨセフが生まれた病院のミスで、パレスチナ人家族の息子ヤシン(メディ・デビ)と入れ違っており……。(シネマトゥデイより)

※ネタバレあります。

「そして父になる」と同じく子供の取り違えをテーマにした作品。
こちらは背景に民族の問題や宗教のことがあるからなおさら深刻である。

対照的だったのは父親たちと母親たちの態度の違い。
頑なに事実を認めようとしなかった父親たちに対し(認めると我が子が敵の民族と言うことになる)
母親たちのなんと柔軟なこと。
どちらの母親も育てた子はもちろん、産んだ子を見つめるまなざしがものすごく優しい。
民族も宗教も理屈も関係ないと言った感じ。これが母性なのだろうか。

当の二人の息子たちであるがその残酷な事実を突き付けられたとき、
それぞれ自分のアイデンティティについて葛藤し、居場所も無く何者でもない自分の立場を憂う。

しかし同じ苦しみを持つ者同士心をかわすうち
居場所がないのではなく、どこでも自分の行きたい所に行けることに
気が付いたんじゃないのかなぁと。
そんな前向きに感じられるエンディングでした。

もっとも印象的だったのは
ヤシンの育ての父サイードに取り違え事実を忘れろと言われた妻ライラの
「土地を奪われたことは忘れるなというのに」と言うセリフ。

歴史よりも何よりも我が子への愛情は深いということなんだな。