「とりつくしま」と言う本を読んだ。

この世に未練を残して死んだ者の前に
「とりつくしま係」なる者が現れ、
死者に何か憑りつきたいものはないかと問う。(ただし無機物に限る)


そして、家族や恋しい人をこの世に残してきた死者は

何に憑りつくか一生懸命一生懸命考えるのです。


ある母親は息子の使うロージンバックに、

ある嫁は旦那の愛用しているマグカップに、

ある娘は母の毛嫌いする補聴器に、

そしてあるお弟子さんは愛する師匠の白檀の扇子に。


そばにいられるのはその憑りついた物がこの世に存在する間だけ。

その物が消滅してしまえば一緒に消えてしまいます。


一瞬で消えてしまうものだったり、日々手に取るものだったり、

年に一度しか使わないものだったり色々だけど

その人に一番近づける物に、

その人が一番いい顔でいられる物に憑りつくのです。



死んだ後もこうやって誰かのことを考えられるって幸せだね。

いつまでもそばにいたい誰かがいるのって素晴らしいことだね。



私が死んだら何に憑りつこう。

私の周りに憑りつかれた物ってあるのかな。



物だらけの自分の部屋を見回しながら思うのでした。



とりつくしま/東 直子