そして、家族や恋しい人をこの世に残してきた死者は
何に憑りつくか一生懸命一生懸命考えるのです。
ある母親は息子の使うロージンバックに、
ある嫁は旦那の愛用しているマグカップに、
ある娘は母の毛嫌いする補聴器に、
そしてあるお弟子さんは愛する師匠の白檀の扇子に。
そばにいられるのはその憑りついた物がこの世に存在する間だけ。
その物が消滅してしまえば一緒に消えてしまいます。
一瞬で消えてしまうものだったり、日々手に取るものだったり、
年に一度しか使わないものだったり色々だけど
その人に一番近づける物に、
その人が一番いい顔でいられる物に憑りつくのです。
死んだ後もこうやって誰かのことを考えられるって幸せだね。
いつまでもそばにいたい誰かがいるのって素晴らしいことだね。
私が死んだら何に憑りつこう。
私の周りに憑りつかれた物ってあるのかな。
物だらけの自分の部屋を見回しながら思うのでした。
