- 夏樹 静子
- 白愁のとき
タイトルのあまりの美しさに思わず購入。
中国の陰陽五行説では季節に色をつけると言う。
「青春」「朱夏」「白秋」「玄冬」
そしてそれを人は人生に例える。
造園設計事務所を構え、ある程度の実績を残し、
その方面ではそれなりの知名度をもつ主人公は
51歳の若さで若年性アルツハイマーを患う。
主治医に宣告された精神余命は1年。
彼は今自分は白秋ならぬ、
白愁のときに立っていると自嘲気味に笑った。
アルツハイマーは徐々に人の記憶を奪い
そして人格を奪う。
不治の病を宣告されたのと変わらない。
刻一刻と記憶が欠けていく中
主人公は仕事の目処をつけようと釈迦力に働いたり
その反動で鬱になったり、自殺を考えたり、
安らぎを求めたりで気持ちに波はあるけれど、
責任が重い分、真摯に病いと対峙している。
暗くなりがちなテーマではあるが、
残された時間をどうすべきかだけ考えてきた主人公が、
どうしたいかを見つけられたとき
暗闇だった未来に明かりが差し込んできた。
読んでる最中にふと、
ダニエル・キイスの「アリジャーノンに花束を」を思い出した。
時間を見つけて読み返してみよう。