「焼き鳥屋」ではない「炙り鳥屋」が多くなった。
料理の「焼く」と「炙る」の違いは何か?
「炙る」は「暖める、乾かす」の他に「ほどよく焦がす」という意味もある。
一方「焼く」とは「熱を通す」ことである。要は「中まで火を入れるか否か」の違いだ。
最近は肉でも魚でも「半生信仰」がはびこり「しっかり焼く」より「表面をさらりと焼いて、中はレア」
という調理法が好まれている・・・これは「炙り」である。
確かに牛肉はそのような調理法も合うが、豚や鳥、魚の「半生」は旨くない。
しかし「(きれいに)中まで火を入れる」というのは技術的に難しい。
単純なレアより均一に上手く火の入った肉や魚は実に旨いものだ。
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ちょっとした事情で、出来て間もない新しい店に伺う。
HPもあり、見れば何やら「すかした店」である。http://psone.co.jp/ourrestaurants.html
看板は目立たず、不覚にも通り過ぎてしまう・・・店内はモダンな造り。
コの字型カウンターは20席以上はあるだろうか?カウンターの焼鳥屋としては大箱である。
メニューはiPadで・・・こういうツールを使うなら写真などを入れて、もっとビジュアル化しないと
「単なる重いメニュー」になってしまう。
また、タッチするとオーダーが通るという機能もいいと思うが・・・って、それじゃ回転寿司か。
ともあれiPadは、メニューを更新するのは簡単だが、それ以上の機能・意味は見当たらない。
コースもあるようだが、焼鳥屋で野菜焼きなんか食うつもりはないので、とにかく肉を。
総評すれば、正に今時の人気焼鳥屋のトレンドとなっている「キレイに焼く」タイプである。
俺が言えば「焼きが甘い」タイプ・・・となる。
肉は比内地鶏というが、この鳥は繊細で焼くより煮る方が旨い肉だと思う。
なので焼くと旨味が飛んでしまう場合が多い。
そして焼きが甘いので「ジューシー」というより「水っぽい」感じがする。
特に炭焼きではその強い火力で余計な水分を飛ばし旨味のある脂を浮き立たせるのが醍醐味だと
思うが、どうも最近の人気焼鳥店の多くは、「サラリ」と焼いているので、旨さが「グッと来ない」のである。
見た目はキレイだが、不味いとは言わないまでも、旨いとも言えない。
週末の夜なのに・・・まだ開店してから一ヶ月少々といえども閑散としている。
客単価は飲んで適当に食えば¥6000~¥8000くらいだろうか・・「普通の会社員」には「高い」だろう。
安価にする必要はないが、やはり価格と内容が伴っていないと厳しい。
良いところは「煙が出ない」ことか。
技術的に煙を出さないのは難しくない。煙モクモクが風情があっていいと言う人もいるが
服に臭いがベッタリ付くのは不快なので、出なけりゃ出ない方がいい・・・焼肉も一緒。
一通り「肉の質」が解るものを頼んで終了。〆はなし。
この手のスタイルが好きだという人も多いとは思うが・・・
俺は残念ながら、再訪は考えられない。
同席した方々には申し訳なく思って店を出た。