無残で悲しき美術館/埼玉県立近代美術館
埼玉の仕事があって、その途中で未訪だった県立近代美術館に寄ってみる。
今は亡き「黒川紀章」の設計で「椅子の美術館」と呼ばれるほど椅子の名作をコレクションしているという。
北浦和の公園内にあるその美術館を見ると、どうも「暗い」。何か「廃墟」を思わせる負の印象である。
それは何故か?は近づくに連れて分ってくる。
この外壁を放置している感覚が分らない・・・個人の建物じゃない・・・公共建築、それも「美術館」だぜ。
外壁は汚れ、塗装が剥げ落ちている。金物の柵などは錆び放題。
周囲も清掃されておらず、土汚れが酷い。
グレーで統一された暗い配色もまた、「廃墟感」を助長している。
また館内に置かれた名作「バルセロナチェア」も革がすれ色落ちして汚いし
マッキントッシュの椅子も塗装が剥げ、痛々しい。
美術館自体の設計も問題で、受付カウンターの正面にトイレがあったり、企画展示室への
アプローチも流れがスムーズでない。
展示室自体もなんとも「おざなり」な感じで、これじゃ作品も映えないな、と思う。
著名な建築家の「哲学」もあるだろうが「公共施設」として、あまりに酷い建築である。
しかし造ってしまったものは、いかに「メンテナンス」するかで存在価値が上下する。
使いにくいのは仕方ないとして、せめて補修や清掃くらいはきちんとやらないと
益々観客は減るだろう。
館内のレストラン(というより「食堂」だ)で休もうかと思うも未だドリンクが¥500、¥600、
ランチにいたっては¥2500だのという「ここでそんな金は払わないだろ」という雰囲気でもあり、
結局はパスした。こういうところにも「何も考えていない」・・・が表れる。
市や町の施設ならともかく「県立」である。
もっと民間の活力を入れてでも「何かしないと」、完全に「廃墟美術館」と言われてしまうだろう。
こんな痛々しい美術館は初めてかもしれない。