吉永誠一(船越英一郎)は、神奈川県警捜査一課の刑事。臨月を迎えた一回り年下の妻・照子(中山忍)とは仲睦まじい夫婦である。横浜の雑木林で、死後半年経過した男性の白骨死体が発見された。被害者の推定年齢は50~60歳、骨の損傷や毒物の検出はなく、遺留品も残されていなかった。警察は行方不明者の中で被害者と身体的特徴が似ている人物をリストアップし、捜査を開始する。吉永は一課のお荷物的存在・小沢とコンビを組まされ、渋々捜査に繰り出した。吉永たちは鎌倉にある黒田邸を訪れる。主の黒田道弘は半年程前、稲村ヶ崎で海に転落したまま遺体が見つかっていなかった。黒田のかかりつけの歯科医を訪れると、歯の特徴が一致したため、白骨死体は黒田と判明する。

①日本画家 有川博(白骨遺体)

②美術系出版社社長 細江仁司(密室での感電死)

③画廊経営者 大和田伸也

 

黒田は去年の9月に稲村ケ崎で失踪していた。

彼の絵を取り扱っていた火野正平によると彼は画家としては最低ランク。

火野は彼が恨まれるとしたら「10年前の贋作事件の線」ではないかと言う。

 

10年前、日本画家の大家 奥原煌春の贋作が関東一円に出回った件で、黒田は取り調べを受けていた。

結局、贋作グループの黒幕が分からず、捜査は打ち切り。

贋作を描いていたのは20歳そこそこの日本画家の卵 橋本マナミ。

彼女は純粋に模写していただけで、贋作として世に出回るとは思ってもいなかった。

そして、模写が師匠に知られて破門になり、将来が断たれたことから青酸カリを飲んで自殺してしまう。

青酸カリは彼女がバイトしていたメッキ工場から入手したとされた。

 

黒田の絵を気に入って買っていた画商の大和田伸也。

彼は去年の夏、黒田から「火野が絵の代金を払ってくれない」との愚痴を聞いていた。

黒田が失踪した日、大和田は京都のオークションへ、火野は館山へ絵の買い付けに行ったとのアリバイ。

 

去年の8月の終わり、奥原の絵が10枚いっぺんにデパートの展示即売会に出たが全て贋作と判明した。

10年前の贋作事件と似ていた。

絵を持ち込んだのは美術系出版社。

出版社に出向くと社長の細江は行方不明で社員の斎藤陽子は贋作であったことは認めたが、知らずに預かっただけだと。

誰から預かったかは明かせないし、黒田が書いたのかも分からないとも。

引き揚げた贋作10枚は社長が持ち帰ったというので彼の自宅へ。

妻の朝加真由美によると、持ち帰った絵の半分は敦盛と名乗る人物が買い、残りの半分は夫がどこかへ持って行ったらしい。

 

細江の死体が静岡県 御前崎の貸別荘で見つかる。

発見したのは「ガスボンベが倒れている」と連絡を貰った管理人。

死因はこたつコードによる感電死で現場は密室。

死亡推定時刻は失踪した日の18~20時の間。

偽名でチェックインした男は大きな帽子にマスク姿。

船越達が到着した時、現場にあった石油ストーブは灯油切れで消えていた。

しかし、管理人が入った時にはついており、灯油の最大燃焼時間は24時間。

となると細江が自殺を図ってから4~5時間経過して、ストーブを付けた計算になる。

つまり細江以外の人物が現場に居たことに…捜査は他殺一本に絞られる。

 

細江が持ち去った残り5枚の絵は細江の愛人 矢部美穂のマンションにあったが陽子が持ち去ったことが判明。

陽子は自分が黒田に贋作を作らせたことを認める。

細江は世間が贋作だと気付くまで、本物だと信じていたらしい。

細江と大和田が喫茶店で何度も会っていたことが分かる。

5枚の贋作を買った敦盛は大和田。

彼はこの10年で自分の画廊を大きくしていた。

 

元々、黒田に贋作10点を描かせたのは火野だった。

手付として黒田に300万円を払ったが資金繰りが悪化し、契約はなしに。

困った黒田が斎藤陽子に泣き付いたのだという。

 

10年前の贋作グループの黒幕は大和田伸也。

去年の贋作騒動から10年前の自分の悪事がバレるのを恐れた彼は細江に連絡を取ったのだ。

展示会の絵が10年前の売れ残り贋作じゃないかと考えた大和田は細江に贋作であることを知らせ、買取を持ち掛ける。

業界に精通している細江は大和田の過去に気付き、彼を脅迫?

更に黒田失踪当日の京都でのオークションは実際には大和田の代理人が入札しており、大和田は翌日に京都入りしていた。

 

貸別荘の宿泊者名簿の筆跡は大和田伸也。

密室の謎は解けた。

細江を殺害し、ガスボンベを倒して管理人に連絡。

内側から全てを施錠して隠れ、やってきた管理人に死体を発見させた後に隙を見て立ち去った。

しかし死亡推定時刻、船越たちは横浜で大和田と会って話を聞いていた。

アリバイ作りに利用された?

 

細江は御前崎ではなく横浜で殺され、翌日に遺体としてが運ばれたのだ。

大和田の自宅を家宅捜索した結果、

大和田は貸別荘にチェックインした後に横浜に戻り、細江を呼び出して自宅の蔵で殺害したことが分かる。

その後、死体を車で御前崎の貸別荘に運んでいた。

更に大和田の車のトランクから黒田の毛髪も発見される。

 

①黒田と②細江を殺したのは大和田。

大和田の逮捕状が出て、船越はお礼を言うために火野の自宅を訪ねるが、そこで火野から出産の前祝いだと焼酎を受取る。

しかし翌日、大和田の死体が発見される。

死因は青酸カリ入りの焼酎を飲んだことによる中毒死。

焼酎のボトルは前日に火野からもらったものと同じだった…。

 

火野は10年前に自殺した橋本マナミの父親だった。

娘の自殺が信じられなかった火野は1人で真相を調べていた。

そして逮捕状の出た大和田を救い、カマを掛けてみた。

すると大和田が娘を殺したことをあっさり認めた為に青酸カリを飲ませて殺したのだった。

 

チョイ役が豪華過ぎ

山口果林に朝加真由美、金田明夫。
 

船越英一郎、中山 忍、火野 正平、大杉 漣、斎藤 陽子、大和田伸也、山口 果林、朝加真由美、林 泰文、金田 明夫、吉満 涼太、遠山 俊也、矢部 美穂、南條 豊、有川 博、松永 博史、俵山 栄子、小口 健一、橋本 愛実
【原作】黒川博行「絵が殺した」(徳間書店刊)