主人公は監察医。遺体の検死・解剖を行う法医学専門の医師で、物を言わぬ遺体から、死にいたらしめた原因を探り出し、その奥に隠された真実に光を当てる。
二宮早紀(名取裕子)は、港南医大・法医学教室の助教授。夫の一馬(宅麻伸)は、横浜東署の刑事。ある日、早紀のもとに、友人の映子(仁科亜季子)が訪ねてくる。その夜、一馬は岡田(伊崎充則)と酒を酌み交わしていた。店を出た二人は駐車場で若い男(山口翔悟)が車を抉じ開けようとしている所を目撃する。取り押さえて尋問しようとした瞬間、男はカプセルを口に含み絶命した。この男は映子の息子の圭太だと判明するが・・・。

 

①フリーター 山口翔吾 (仁科亜希子の息子)
②焼き鳥屋店員 伊崎充則(元ヤクの売人) 

③実業家 本田博太郎

 

宅麻伸は翔吾が車をこじ開けようとしている現場を目撃。

その時、宅麻と一緒に居たのが彼が更生させた元ヤクの売人 伊崎充則。

伊崎は逃げる翔吾を捕まえ、何度も殴ってしまっていた。

 

翔吾の死因は毒物中毒で、飲んだのは青酸カリ。

宅麻伸がカプセルを飲む前の彼の勝ち誇った顔を見ていた。

薬による錯乱状態とか、思い詰めての自殺したとかではなかった。

薬の売人の間では「覚せい剤の形跡を消す薬がある」と評判だった。

そんな薬はないが噂を鵜呑みにした翔悟がその薬を手に入れて、飲んで死んでしまったようだ。

何者かが予め、カプセルに青酸カリを入れていたか、すり替えたかの殺人。

 

ノンフィクション作家である母親の仁科亜希子は息子がシャブ中だったことを信じようとしない。

彼女の後夫 本田博太郎は殴られたことで死んだのに、二宮先生が夫を庇う為に嘘の鑑定結果を出したのではと疑い、別機関による再鑑定を求める。

仁科のファンサイトには何者かによる「翔吾は宅麻伸や伊崎に殺された。2人を死刑に」との書き込みがあり、額に「×」印を入れた2人の画像や伊崎の働く焼鳥屋の名前まで載っていた。

 

宅麻伸がバイクに撥ねられて、全治一ケ月の大怪我を負い、伊崎は港の倉庫で転落死体となり見つかってしまう。

伊崎はダイイングメッセージ「±」を血文字で残していた。

古材木がクッションになって脳挫傷による即死にはならなかった。

死亡したのは突き落とされた1時間後。

その1時間の間に彼はダイイングメッセージを残そうとしたのだ。

頭部には「×」印。

頭部の傷には生活反応が無かったことから、犯人は突き落とした後にネットで額に印のある画像を見て、現場に戻って傷をつけたと考えられる。

 

出所後、真面目に構成していた伊崎を恨むものがいるとは考えにくい。

犯人はネットを見た過激な連中か、翔悟の両親?

仁科が実業家である本田と再婚したのは2年前。

しかし、本田の会社の経営不振で夫婦の中は冷え切っており、彼は若い愛人を囲っている。

愛人に金が掛かり、金を引き出すために復讐を買って出た可能性もある。

仁科の秘書 西川忠志も怪しい。

行き方に心酔していて頼まれなくても、彼女の為に復讐したいと言う気持ちはあるはず。

 

病院を抜け出した宅麻伸の後をつける男が逮捕された。

彼はビデオマニアの平沼誠二で宅麻をバイクで襲ったことは認めるが、伊崎殺しは否認し、アリバイも確認された。
人殺しをカメラに収めたかった彼はネットに書き込んで仁科のファンを煽っただけで、ファンでも何でもないと言う。

 


翔吾の死因の再鑑定は二宮先生の鑑定と同じ結果だった。

仕事ばかりで息子に構ってやれなかったこと仁科は自分を責める。

伊崎の首元にはスタンガンの跡があったが、仁科が持つ護身用のスタンガンとは形状が違った。

しかし、仁科は別のスタンガンを法医学教室に持ってきた。

そちらが傷と一致すると、仁科は自分が犯人だと言い出す。

彼女は誰かを庇っている?

 

伊崎は殺される前、昔の売人仲間からの情報で翔悟の持っていた偽薬の出所を掴んでいた。

出所は翔吾の身内だという。

仁科が「自分が息子も伊崎も殺した」と自首してきた。

動機は家庭内暴力で、青酸カリはアメリカで手に入れたと。
しかし、二宮先生は信じない。

二宮先生は西川に呼び出される。

彼曰く、仁科が二宮先生のところに持ってきたスタンガンは本田の物だという。
仁科は「自分が再婚したせい」と夫を庇っていると。

本田は行方不明で、二宮先生と西川は彼を探し回るが、見つけられず。

 

翌日、本田博太郎の死体が見つかる。

ワープロ打ちの遺書には「夫婦関係がギクシャクし、会社経営も上手くいかず、息子に掛けた保険金目当てに彼を殺害。

自分の犯行と嗅ぎ付けてきた伊崎も殺した。」とあった。

死因は窒息死で死亡推定時刻は19~21時。

口の中には大量の砂とティッシュペーパーの切れ端。

ちょうど二宮先生が西川と一緒に本田を探している時間。
 

二宮先生も宅麻伸も同じ疑問。

憎んでいる義理の父親からカプセルを渡されて素直に飲むか?

 

真犯人は秘書の西川忠志。

彼は28年前、仁科がアメリカ留学中にレイプされて生まれた子。

仁科は出産直後に彼を養子に出し、その実体験を友人の出来事と偽り、出版して売れっ子になった。

翔吾は西川の部屋に盗みに入り、仁科と西川の秘密を知った。

西川は「秘密を金にする」と強請ってきた彼を殺害。

カプセルが身内から渡されたものだと掴んだ伊崎も殺し、サイトのファンの仕業に見せかけるために犯行現場に戻って、額に傷を付けた。

仁科は薄々、西川が自分が産んだ子ではと感付いていた。

西川のスタンガンが凶器に使われたと知った彼女は西川を庇って自首。

 

本田にも秘密を気付かれ、西川は彼も自殺に見せかけて殺害。

本田の口にティッシュを入れ、自動給水器を使って水を少しづつ含ませて、段々と息ができなくして殺害し、アリバイを作ったのだった。

 

西川は養子に出された日系人の家で酷い目にあった上に、家に子供が生まれると放り出され、施設を転々とさせられた。

自分は辛い思いをしているのに、仁科は自分のことを書いて成功。

復讐してやりたくて仁科に近づいたのだった。

しかし、暴力を振う翔吾から母親を庇ったり、愛情もしっかり持っていたのだ。

二宮先生は仁科に「これから母親になって、彼を支えてあげて」と諭す。

 

 

 

名取裕子、宅麻 伸、西村和彦、仁科亜季子