花村乃里子(沢口靖子)は警視庁鉄道捜査隊・東京駅分駐所所属の主任捜査官。彼女の夫も警察官だったが数年前に殉職し、今は小料理屋を営む亡夫の母・光代(大方緋紗子)と暮らしている。ある日乃里子は、パトロール中に引ったくり騒ぎに遭遇する。初老の男が鞄を奪われ、引ったくり犯は逃走してしまう。被害者は、乃里子の仲人であり、この春定年を迎えた元刑事の川島正(樋浦勉)だった。川島は、羽田から北海道に飛ぶため急いでいるとのことだった。
 翌日、乃里子のもとに川島の妻・君子(大森暁美)が訪ねてくる。川島が北海道で死亡したというのだ。乃里子は、上司の倉田課長(地井武男)の許可を取り、君子と共に北海道に向かう。川島の死体が発見されたのは、函館駅からほど近い函館本線の線路脇で、首を絞められ列車から突き落とされたらしい。川島は、南千歳から函館までの『スーパー北斗』のグリーン券を所持していた。だが、スーパー北斗の窓は全てはめ殺しで、この列車に乗っている限り、誰によっても突き落とすことは不可能だった。その夜、乃里子は倉田からの電話で、東京にある川島の留守宅に空き巣が入ったことを知る。倉田によると、金目のものは何も盗まれておらず、ただ川島の書斎にあった手紙類が荒らされていたというのだ。たまたま、父親の死を聞いて駆けつけてきた娘夫婦と空き巣が鉢合わせをし、空き巣の顔を確認していた。その男(須藤雅宏)の人相を聞いた乃里子は、川島の鞄を奪った引ったくり犯と酷似していることに気付く。 
 乃里子は君子から、ひと月ほど前に川島宛に一通の手紙が届き、それを読んだ川島が考え込んでいたとの証言を得る。君子の話から察すると、その手紙は刑務所から出されたものらしい。やがて、手紙の差出人が判明する。殺人罪で府中刑務所に収監されている高井(若林久弥)という男からのものだった。高井は恋人の井上由美子(松井茜)を殺害したかどで十年の懲役刑に処せられていた。そして、この事件を担当したのが川島だった。乃里子は、事情を聞くため高井に会いに行こうとするが、高井は手紙を出した5日後に自殺していることがわかって…。

 

①元刑事 川島正

⓪服役囚 高井涼一(自殺)

②別荘販売会社支店長 佐戸井けん太

③ブティック店員 芹沢亜紀(由美子の友人)

 

手紙を送ってきた高井は殺人の罪で懲役10年の刑を受けていたが、手紙を出した3日後に自殺していた。

刑務官によると内容は「自分は無実だ、身をもって、それを証明する。」

川島はその事件を担当した刑事の一人で、手紙を受取り、1人で再捜査していたようだ。

 

事件は1年前。

被害者の井上由美子は会社員で親密な関係を結んでいたのは3人の男。

上司の佐戸井けん太。
フリーの建築設計士 野本裕二。

学生時代から付き合っていた高井。

失業中だった高井は由美子とのケンカが絶えず、彼の部屋から由美子名義のキャッシュカードと現金50万円が見つかる。

高井は一旦は罪を認めたが、裁判で無罪を主張していた。

いくつかの不明な点があった。

被害者はOLには不相応なぜいたくな暮らしをしていたこと。

高井が盗んだとされるキャッシュカードで、現金が引き出された事実がないこと。
 
建築家の野本は1ヶ月前からアメリカに行っており、川島殺しとは無関係。
人事異動で北海道へ転勤になった佐戸井に代わって、専務の中原丈雄から話を聞くが、彼は佐戸井と由美子が男女の関係だったことを否定する。

支店の支店長として千歳に住んでいる佐戸井に会いに北海道へ。

社宅には彼の妻 真行寺君枝がいた。
娘や父親が北海道への引越しを拒否したため、佐戸井は現在単身赴任中で、妻は東京と千歳を往復する生活を送っている。

転勤は由美子の事件後、彼女との不倫関係が噂されたためだった。

妻によると佐戸井は事件当日、午前中は家にいたが、午後は用事があると言って出掛け、帰宅は24時を過ぎていたらしい。 

その時の夫はひどく疲れているように見えましたと。
本人もその日は札幌で気晴らしをしており、川島の死亡推定時刻19~21時は映画を観ていたと言う。


沢口靖子たちは川島の行動を追ってみることに。

15:34 南千歳発 特急スーパー北斗16号(終点は函館)

川島は自分でグリーン車に乗る人じゃない。

何者かがグリーン券を買って、彼を誘ったに違いない。

17:10長万部で下車し、50分後の後続の普通列車に乗り換え。

20:42渡島大野に到着。
そこから数分後に殺害されたとすれば死亡推定時刻と一致する。

乗客が少なければ、首を絞めて失神させて窓を開けて突き落とすことは可能。

しかし、普通列車に乗り換えてから2時間45分も経った渡島大野の先で殺人を犯す状況になったのは何故か?

21:07終点函館着。

事件当日、スーパー北斗に乗務していた車掌から話を聞く。

長万部駅を経った後、「今の駅で降りた年配の男性が落としていった」と男がライターを届けにきたと。

ライターにはローマ字で「KAWASHIMA」と彫ってある。

ライターを届けた人物は佐戸井だった。

彼の札幌にいたというアリバイは嘘。

しかし、川島は長万部で降りたのに、降りずに函館まで乗っていった佐戸井は後続の普通列車には乗れない。

 

川島の遺体が発見された渡島大野は南千歳から250キロ、長万部から95キロ。

しかし、函館からはたったの18キロ。

スーパー北斗が渡島大野を発車した直後、佐戸井は川島のライターを盗み、車掌に届けに行って川島が渡島大野で下車したかのように見せ掛けた。

18:242人が乗ったままのスーパー北斗16号が函館着。

18:34大沼行きの下り普通列車でUターンし、その車内で犯行に及んだのだった。

 

大沼公園で佐戸井の死体が発見される。

妻によると彼は「自分にもしものことがあったら、親父と娘を頼む」と言い残していた。

佐戸井は青酸カリを飲んでの自殺で、車内には遺書があった。

遺書には「1年前、不倫関係だった由美子と痴話喧嘩になり、カーッとなって殺害。罪を高井に擦り付けたが、最近になって事情を聞きたいと川島から連絡があり、逃げられないと考えて殺害を企てた」と。
 

妻によるとここ数年、佐戸井は金使いが荒かったらしい。

彼女は夫が他にも悪いことをしていたのではないかと心配。

靖子たちには疑問が残っていた。

川島は元刑事でそう易々とやられるはずはない。

共犯者がいたのでは?

専務の中原によると会社は数億円もの使途不明金の調査中で佐戸井も調査対象だったという。

 

真犯人は中原丈雄。

中原は大学の後輩でもあった佐戸井と組んで、会社の金を横領。

その秘密を知った佐戸井の愛人 由美子は毎月、金を貰っていた。

中原は行きつけのクラブ従業員に由美子を殺させて、高井に罪を擦り付けるが、高井から手紙をもらった川島が佐戸井を疑い、再捜査を始めてしまった。

このままでは自分の罪も暴かれると恐れた中原は佐戸井とクラブ従業員に川島を殺害させる。

しかし、川島は高井からの手紙を持っていなかった。

東京へ戻ったクラブ従業員は川島の家から手紙を盗み出し、恋人の③亜紀に預ける。

中原は佐戸井を殺害。

これは、二つの殺人の罪を佐戸井に擦り付けるだけではなく、佐戸井の妻を手に入れるためでもあった。

5年前に妻を亡くしてから、中原は佐戸井の妻と不倫関係だったのだ。

 

中原は手紙をネタに脅迫してきた亜紀を「5000万円で買い取る」と持ち掛けて殺害し、クラブ従業員も殺そうとするが、そこに現れた沢口靖子たちによって逮捕される。

 

沢口 靖子、真行寺君枝、地井 武男、中原 丈雄、今村 恵子、野村 祐人、佐戸井けん太、大方緋紗子、樋浦  勉、大森 暁美、長谷川朝晴、吉野きみか