京都府警捜査一課・音川音次郎の活躍を描いた人気ドラマシリーズ第32弾。当シリーズの主演であり、急逝した名優・藤田まことの遺作となった作品。
人間国宝級との誉れ高い京友禅作家の工藤弘輝(清水こう治)が作品展のパーティーでワインを飲み、死亡する。ワインにはトリカブトの毒が混入されていた。現場で同じワインを飲んだのは、夫人の工藤美和(多岐川裕美)をはじめ、気鋭の友禅作家、坪井正伸(鷲生功)、工藤の秘書の中野千明(井上和香)、そして、工藤とは高校時代からの友人で、国会議員の八木沢一栄(浜田晃)の4人。美和夫人の容態は深刻だったが、他の3人は幸い軽症だった。
京都府警の音川音次郎(藤田まこと)は、生き残った4人の中に犯行に及んだ人物がいるのではないかとにらむ。そして坪井、千明はもちろん、国会議員の八木沢や面会謝絶の解けた美和にも話を聞く。これが八木沢の逆鱗に触れた。元警察官僚の八木沢は捜査に圧力をかけ、音川は一週間の謹慎処分にされてしまう。
が、府警の同僚や秋山課長までが謹慎中の音川に次々と情報をもたらす。工藤はひと月ほど前にも車にはねられるという事故にあっていた。故意による殺人未遂の見方もあるという。場所は新潟県十日町市。十日町は美和の生まれ故郷でもあり、工藤と美和が知り合ったところでもある。さらに音川は、妻の墓がある墓地でこれまでに何度が美和を見かけていた。美和は人違いだと否定するが、あれは誰の墓だったのか? 音川は謹慎中にもかかわらず十日町へと向かい、美和の過去を辿る。母子家庭で育った美和は美術の才能に秀でており、高校卒業後は地元の友禅染めの工場に就職。その後、父の営む呉服屋の仕事のために十日町に訪れていた工藤と知りあう。美和の才能に惚れ込んだ工藤は彼女を京都の美大に入学させた。そして、卒業と同時に2人は結婚。美和は友禅作家としてではなく、妻として工藤を支えることを選んだ。なぜ、才能豊かな美和が友禅作家の夢を捨ててしまったのか?だが、音川は明確な答えを探りだすことはできなかった。
一方、京都では坪井が千明と美和の2人と男女の関係にあることが判明。坪井は美和が本命だと刑事に告げるが・・・。さらに、十日町市で工藤をひいた車が坪井の所有する車と同じだと判明する。
京都に戻った音川のもとに、十日町市で話を聞いた美和の高校時代の教師から電話が入る。美和には大学時代に心を誓った同級生がおり、母親の葬式に十日町まで連れてきたというのだ。その男性を突きとめた音川は・・・!

 

①友禅作家 清水綋治

 

清水の作品は多岐川裕美の描いたものだった。(ゴーストライター)

彼女は美大の学費や生活費を出してくれた夫の恩に報いるためだと言う。

大学4年生の時に女手一つで育ててくれた母を亡くしていた裕美。
彼女は母の葬式に男性を連れて来ていた。
彼の名は吉川忠彦。
裕美と同じ大学の学生だったが昭和51年、学園闘争の内ゲバで首謀者として誤認逮捕されてしまう。

長い拘留と連日の厳しい尋問に耐えられず留置所で首を吊って自殺。
彼を無理やり逮捕したのが当時、警察のエリート官僚だった国会議員の浜田晃。
 

裕美は若い友禅作家 坪井と不倫関係にあったが、男は清水の秘書 井上和香とも関係を持っていた。

その事を音やんから聞かされた裕美は激しく動揺。

そして退職金&坪井との手切れ金として和香へ1000万円を手渡す。

「彼にとって、あなたのことは遊びなのよ。いずれ捨てられるのだから、早く別れた方があなたの為。きっとあなたには他にいい人が見つかるわ。」と。

しかし和香は鼻で笑う。

「奥様は分かってない。遊ばれてるのはご自分の方。」と。

坪井は会社を立ち上げる為に裕美からできるだけ多くお金を引き出させようとしていた。

和香はその会社の共同経営者になる予定だと。

本命は和香だった…。


裕美は鞍馬の火祭の夜、自分を騙していた坪井を毒殺しようとするが、直前で刑事たちが乗り込んで逮捕される。

坪井を殺そうとした毒は清水殺害と同一のものだった。

同じワインを飲んだにも関わらず、清水だけが死んだのは裕美が隙を見て、彼のグラスに毒を更に入れたから。

 

裕美にとって忠彦は初恋の人だった。

大学を卒業したら、結婚して2人の工房を持つ約束をしていた。

しかし、そんな2人の仲を引き裂こうとしたのが清水。

友人の浜田に頼み、冤罪を押し付けた結果、忠彦は重圧に耐えかねて自殺。

無実を信じていたが

友禅作家になる夢を絶たれて絶望。

 

裕美が浜田と清水の会話から、忠彦の死に夫が関係してると知ったのは1年前。

「ずーっと騙されていた。私の人生は何だったんだろう。」

夫への復讐を考えるように。

そして、夫を裏切って不倫し、のめり込むことで何もかも忘れようとしたのだった。

不倫相手から一緒に会社をやろうと誘われ、自分が自立した友禅作家になるために夫を殺害したのだった。

 

課長へのお土産は十日町名物 はっか糖。

入れ歯の課長には固すぎるらしい。

 

藤田まことの遺作となりました。

 

藤田まこと、萬田久子、多岐川裕美、鷲生功 、井上和香