義母の看病で迷いこんだ死の扉 夜と昼の電話番号に秘めた妻の素顔!
浜名湖近くの窯跡で、東中野署に捜索願いが出されていた保険調査員・須田美和子の絞殺死体が発見された。たまたま浜松に行っていた鬼貫は、浜松署の捜査に参加。まもなく駆けつけてきた美和子の夫・須田誠司や上司の大津公一らから話を聞いた。美和子が東京から調査にやってきた目的は、山野という土産物屋の妻・郁子の首吊り死亡事件の真相究明。
郁子が殺されたと判断された場合、美和子の会社は2000万円の生命保険金を払うことになる。その郁子と山野の愛人・伊達里子は、かなり以前から揉めていたのだ。地元捜査陣はこの事件に関し、現場にあった首吊りのための踏み台が低すぎたことから他殺と判断。話を聞いた鬼貫は、自殺の場合保険金が出ないのに、なぜ何者かが自殺に見せかけたのか、と首をひねる…。
①保険調査員 永島暎子
犯人は上司の渡辺いっけい。
昼は働き、夜は姑の介護。
疲れ切っていた暎子は誰にも邪魔されるに眠れる時間が欲しいと、夫には内緒でアパートを借りていた。
布団が1組だけある部屋。
しかし、1時間だけでも邪魔されることなく眠れる天国だった。
半年前、偶然部屋の存在を知った渡辺を招いた暎子は彼に気持ちをぶちまけた。
結婚前、やりたいことが沢山あった暎子だったが、仕事を辞めることを条件に結婚。
しかし、夫婦には子供ができず、姑から「主婦は2人もいらない」と働きに出された。
ところが、姑に介護が必要となると、夫から再び仕事を辞めろといわれた。
これ以上、人に人生を決められたくない暎子は抵抗。
親戚や近所の人たちからは「酷い嫁」と言われながら、意地でも仕事を続け、その代り、夜には介護も必死で行っていた。
いっけいはそんな彼女に同情し、暎子はいっけいに癒され、そこから男女の関係に。
部屋にはベッドを入れ、ドレッサーを買い、様変わりしていき、「家庭を壊すつもりはない」と言いながら、自分を離そうとしない彼女にいっけいは恐ろしくなった。
妻の出産が近づいたいっけいは暎子との関係を清算しようとするが、彼女は応じない。
そこでいっけいは暎子の夫 石丸謙二郎に匿名で「奥さんは別にアパートを借りている」と密告。
石丸は妻に「出て行くなら、出て行ってもいい」と言うが、暎子はこれまで通りの生活をし、石丸も敢えて何も言わない状況だった。
密告したのはいっけいだと気付いた暎子は彼に「もう、戻れない。壊したのはあなた。こうなったら、あなたと行きつくところまで行くだけ」と。
いっけいは「彼女は女として壊れたがっていた。しかし、自分は壊れるわけにはいかない。」と彼女の殺害を決意した。
土産物屋の妻の死はやはり自殺。
自殺では保険金が下りない為に夫は「自殺に見せ掛けた他殺」を装ったのだった。
色々と考えさせられる主題だねぇ。
鬼貫八郎…大地康雄
須田誠司…石丸謙二郎
須田美和子…永島暎子
大津公一…渡辺いっけい
山野市郎…掛田誠
伊達里子…平栗あつみ
木堂…住吉正博
碓氷刑事…羽場裕一
黒川課長…天田俊明
島田刑事…十貫寺梅軒
【原作】鮎川 哲也(『偽りの墳墓』より