鋭いカンと、厳しい観察眼で、事件の全貌を暴いていく人気シリーズの第3弾!
 都内の廃工場の裏でカメラマン・小日向の死体が発見された。鬼貫刑事は、小日向の妻と三角関係にあった坂下を捜査。発見された凶器等から、坂下が仕事先の名張市で殺害し、死体を東京まで運んだと考えた。ところが、推理作家の横川は、坂下は犯人ではないとテレビで発言する。やがて小日向はいとこの早苗とばく大な財産を共有し、横川が早苗の婚約者とわかった。鬼貫は横川を調べるが、横川には確かなアリバイがあった…。

 

①ヌード専門のカメラマン 小日向大輔

②名張の青年 加藤恭平

 

死亡推定時刻は7月6日の午後2~4時
胃の中に未消化の瓦せんべい。

さらに、口の中からも「賃」か「貸」なのか分からない焼き印のある瓦せんべい。

 

妻の聡子とは2週間前に協議離婚していた。
彼は両刀使いで妻の聡子もそのことは知っていた。

2か月程前、銀座のクラブで坂下守という男と派手な立ち回りをしていた。

ことごとく対立しあっていた2人は写真学校の同期で同じヌード専門のカメラマン。

小日向は学生時代、坂下と付き合っていた聡子を横取りして、強引に結婚したらしい。

 

坂下は7月4日まで沖縄の西表島に1ヵ月ほど籠ってた。

5日に大阪空港に着いて、助手に用意させておいた車でそのまま三重県の名張に行き、6日はその周辺で過ごしたと。
名張は江戸川乱歩の生まれたところで、推理雑誌の依頼で周辺の写真を撮りに行っていた。

1か月籠っていたことで、小日向の離婚は知らなかった様子。

 

鬼貫さん達は坂下のアリバイを確認しに名張へ

7月6日

12時頃、名張駅前のレストランで昼食を取った事を確認。

12時半、レストランを出て途中、何カ所かで風景写真を撮って
16時過ぎ、赤目口駅の食堂でサイダーを3本も飲んだことも確認。


食堂のおばちゃんが暇つぶしに戌神さんの話をしたという。
近所の長寿院というお寺に祀られてる十二神将の内の戌神さんの仏像が誰かに壊され、それが見つかったのが6日の午後らしい。

 

坂下のアリバイは完璧。

と思われたが、名張の和菓子屋で「二銭銅貨」なるせんべいを発見。

オリジナル商品で全国探しても、ここでしか売っていない代物。

「賃」でも「貸」でもなく「貨」だった。

 

東京での死体発見は二日後の7月8日の朝方。

犯行現場が名張だとしたら、死体を東京へ運んだことに。

6日に何らかの理由で小日向を呼び出して殺害し、その後サイダーを飲んで印象付けた後に死体を東京へ。

問題は犯行現場の特定と凶器の発見、そして小日向をどう呼び出したか…

 

元妻によると、三重県の山奥に世阿弥のかくしゅう?があると小日向から聞いたことがあると。

自然の中でヌードが撮りたいと言っていたから下見に行くことなら考えられる。

 

折られていた戌神さんの握りしめてる剣が見つかった。

それには人間の血痕が付着しており、血液型は小日向と同じ。
その後、剣が発見された付近で血痕の付いたD・Kのイニシャル入りハンカチを発見。

小日向大輔?
 

坂下を重要参考人として呼ぶが、彼は犯行を否認。

鬼貫さんも全ての状況証拠が名張に集まっていることに釈然としない。

更にテレビでは推理作家の長谷川初範がこの事件は冤罪の可能性があると語っている。

 

聡子は坂下とヨリを戻していたことを認める。

鬼貫さんが彼女に何か別に、殺される原因はないかと尋ねると

「土地の権利書が出てきたくらいで、あとは何も…」

土地は死亡した親戚から相続した和歌山県の山林で原田早苗という従妹との共同所有。

半年前まで二束三文だったが最近、大企業の工場の候補地になり、億単位の値がつく予定であることが判明。

 

アウトレット店の店長をしている原田早苗に会いに行く。

彼女にはしっかりとしたアリバイがあった。

彼女は推理作家の長谷川初範と婚約しているらしい。

 

長谷川にも話を聞きに行く。

7月5日に伊豆の土肥温泉に宿に着いて、7月6日は朝6時から恋人岬の近くで次回作の構想をしながら、1人で釣りをし、旅館に戻ったのは夕方6時前後だという。

 

12時間の間に名張まで行って帰って来れるのか?

長谷川が得意げに解説し始める。

土肥温泉に一番近い駅、修善寺までバスで50分。

修善寺から踊り子号で三島まで20分。 

三島から新幹線で名古屋までは2時間。 

名古屋で近鉄特急に乗り換えて、名張まで1時間半。 

合計すると、土肥温泉から名張まで4時間40分。 

汽車の待ち合わせ時間があるから片道5時間半見ておけばいい。

往復11時間。

小日向と待ち合わせ、犯行に要する時間を1時間とするなら、長谷川にも犯行は可能。 

ところが彼には7月6日の昼に土肥にいたという歴然とした証拠があるという。
旅館でこさえてもらったお弁当を食べに 近くの松原公園へ行った際に写真を撮っていた。

世界一の花時計がある公園で花時計は11時14分を指していた。

11時過ぎに西伊豆の土肥にいたということは、どうやっても名張と往復することは無理。

撮ってもらったのは通りかかった地元の人で自転車の荷台に荷物を積んでいたので、どこかの商店の人らしい。


土肥温泉の旅館の女将 阿知波悟美は長谷川が別の日に泊ったことはないと断言。

旅館では浴衣と陣羽織を季節ごとに替える10種類の中から客に好みで選んでもらう。

最近ではゴールデンウィーク明けに全部の柄を新しくしており、長谷川が写真の中で来ているものも、その時に新しくしたものだという。

持ち帰ったり、業者が横流しすることも絶対にないらしい。

 

長谷川は曲がりなりにも名の売れた作家。

土地目当てで殺人なんてリスクを負うのか?

しかし、作家と言ってもデビューから2、3作は売れたが後は返本の山らしい。

 

事件に前後して名張で加藤恭平という青年が行方不明になっていた。

友人によると失踪直前、東京からきた雑誌記者を名乗る人物と取引しようとしていた。

彼は小日向殺しに関係していると匂わせていたらしい。

真犯人の情報か、坂下が犯人じゃないと立証する材料?

公表されるのを恐れた何者かが公表されるのを恐れて拉致したのか?

 

その記者を名乗る男は長谷川初範だった。

長谷川はあっさりと加藤に接触したことを認める。
親戚になるはずだった小日向が殺されたので、事件には人一倍関心があり、現地調査に行ったと。

長寿院で「俺、事件の秘密を握っとるんだわ」と友人に話しているのを聞き、話を聞こうとしたが、お金と引き換えだと言って50万円を要求された。

手持ちが無かったので改めて会う約束をして翌日、用意して待ち合わせに行ったが、加藤は来なかったという。

 

鬼貫さんは長谷川がクロだと断言。

しかし、写真のトリックが解けない…。

更には写真を撮った人が見つかり、撮った日は間違いなく7月6日の昼前だと断言されてしまう。

厳しい取り調べを受ける坂下も「きっと、俺がやったんだよ。もういいよ、好きにしてくれ…。」と。

 

加藤恭平が焼死体で見つかる。

幼馴染によると、彼は7月の3.4日の2日間、臨時でアリバイトをしていた。

十二神将のことを調べる京大の偉い先生に運転手を兼ねて道案内をしたらしい。

 

鬼貫さんが自宅で考え込んでいるとお母さんが遅くに帰宅。

新宿の伊勢丹の地下道を出たところで迷子になったという。

しょっちゅう買い物に行ってるのに地下道を出たところで方向感覚が狂って、全然別の方に出ちゃったらしい。

更に考え込む鬼貫さんにお母さんが「一杯だけ…。」

 

「方向感覚」「全然別の方」

もう一度、原点に戻って犯行現場が名張ではなく東京だとしたら…

名張への往復11時間は無理でも、東京なら可能。

土肥温泉から修善寺までバスで50分

修善寺、三島間は20分

三島から東京は1時間

往復6時間もあれば、東京で殺害して土肥まで戻る事はできる。

 

偉い教授から聞いた話。

3日は十二神将の細部を念入りに調べ、4日はカメラに収めようとしたら、戌神の像が壊されて剣が無くなっていた。

翌日から韓国へ出掛ける教授は加藤青年に警察へ届けるように言い残して名張を後にした。ところが、加藤青年は直ぐに届を出さなかった。

戌神の剣が盗まれたのは3日の夜~4日の朝。

その間、坂下は西表島にいて、盗み出す機会は無かった。

 

7月4日の早朝、殺害現場を名張だと思い込ませる為に戌神の剣を東京へ持ち帰る。(+せんべい購入)

7月6日、アリバイ写真を撮ってもらった後、東京へ。

仕事部屋に呼び出しておいた小日向にせんべいを食べさせてから、剣で刺し殺した。

死体を取りあえず部屋に放置し、土肥温泉に戻り一泊。

翌日7日に東京へ帰り、死体を運んで転がした。

そして8日、名張に向かい、殺害現場が長寿院であるように細工した。

 

名張を犯行現場に見せ掛けたのは、自分が往復できないというアリバイの成立と坂下を犯人にするため。

やはり目的は土地の権利で、長谷川は小日向が聡子と離婚するのを待って、小日向を殺害した。

ただ、全て鬼貫さんの推論に過ぎない…。

 

しかし、長谷川にとって教授の存在がネック。

教授が3日と4日の戌神ことを証言すれば、坂下の容疑は一気に晴れ、苦労して用意したダミーが役立たなくなる。

となると、教授の命を狙うはず。

教授は今日の午後1時15分、成田に到着予定。

その足で三重県の湯の山温泉に向かが、その前に立ち寄って供述をしてくれる手筈。
長谷川には尾行が付いており、鬼貫さんが空港まで迎えに行くことになっている。

 
ところが、尾行が長谷川にまかれ、教授も偽の警察からの「変更して欲しい」と連絡があり、成田ではなく名古屋行きの便に乗ったという。
「やられた!長谷川の奴、先回りしやがった!」

更に名古屋空港での警護が間に合わず、鬼貫さん達は湯の山温泉へ向かう。

 

まさに、教授を殺害しようしている長谷川を取り押さえ、まずは殺人未遂の現行犯で逮捕。

最初は作品を書くつもりで計画を立てたけれど、自分でもびっくりするほど、完璧な計画だったことから実行したくなったらしい。

 

結局、小日向の土地はどうなる?

そもそも、小日向が死んだら、絶対に彼の分は従妹のものになったの?

どっちにしても、工場の計画が白紙になって、結局は二束三文になるってオチが良かったな。

性格悪い?

 

あと、加藤青年は何故、直ぐに届を出さなかったのさ。

殺人事件に関係してると知るまで、数日あったよね?


鬼貫八郎…大地康雄
丹那孫六…川野太郎
横川冬樹…長谷川初範
原田早苗…久我美智子