倒産した会社の役員が刺殺体として見つかった。現場の近くで被害者の靴をくわえた犬が目撃されていた!
都内の公園で男の刺殺死体が発見された。殺されたのは半年前に倒産した菊田建設の新規事業開発部の担当役員だった若槻俊。調査によると、この開発部は1年前、500万円の出資金提供を条件に、20人の幹部社員を採用。倒産後、若槻は集めた1億円を優良会社の株に換え、着服して失踪していた。鬼貫ら担当刑事らは、金を取られた上に倒産の憂き目にあった20人の中に容疑者がいると察知。
だが、20人はそれぞれアリバイを主張、それが全て確認されてしまった。そんな中、倒産直後、若槻の部下で開発部の経理担当だった寺島繁雄が自殺していたことが判明。未亡人の扶美子を訪ねた鬼貫は、寺島が若槻に騙されていたと知った。扶美子の話によると、若槻の失踪後、怒り狂う20人の出資者たちの矢面に立ったのは寺島一人。真面目一途で経理畑を歩いてきた寺島は罪悪感に苛まれ、ついに自らの命を断っていたのだ。


①元担当役員 若槻俊二

⓪元経理担当部長 寺島繁雄(自殺)

 

涼風真世の演技が苦手なので、超サクッと。

 

犯行時刻は2月10日の夜8時ごろ

 

犯人は若槻に騙された出資者の1人 前田吟

事件当日、彼は1人で真鶴に行っていたという。

寿司屋に寄ったとのこと、寿司屋の主人も彼の事を覚えていた。

夜8時に10人前の折詰の注文が入り、忙しかった時に彼が湯呑を割ったので、よく覚えていると。

結局、その折詰は誰も取りに来なかったらしい。

 

鬼貫さんは、事件当夜に目撃された赤まだら犬を見つける。

半年以上前に亡くなったホームレスが飼っていた犬で、今は仕方なく別のホームレス 小宮孝泰が面倒を見ている。
彼曰く、実際には血まみれではなく、赤い絵の具まみれだったらしい。

 

事件当夜、赤まだらの犬について、多くの目撃情報が寄せられたが、最初の通報者は8時過ぎ。

「まだらな犬が咥えていた靴を拾ったから、植え込みに投げ入れといた。」と交番入った電話。

しかし、作為的に赤まだらな犬が作られたのであれば、犯行時間も犯行現場も誤魔化したと考えられる。

目覚めるまでの時間を計算した量の睡眠薬を飲ませ、眠らせた犬を人目につかぬ場所に隠し、予め用意しておいた靴も植え込みに隠す。

若槻とどこかで落ち合い、自分の車に乗せて真鶴へ向かう。

真鶴で彼を殺害し、死体をトランクに隠して、何食わぬ顔で寿司屋へ。

予め10人前の折詰を注文し、更に印象付けるために、帰り際に湯呑を割った。

犬が起きる時間に交番に電話をして、警官に靴を発見させる。

中野の公園にあった血液は真鶴から運んできた。

遺体から何らかの形で採取した血液に、凝固しないようにクエン酸ナトリウムを入れれば、さらさらなままの血液を運ぶことができる。

しかし、そのままでは自然の状態には戻らない。

そこで塩化カルシウムを入れて血液が凝固するようにしてから遺体近くに血液を撒いた。

 

鬼貫さんが推理を話しても恍ける前田。

しかし、人になつかないはずのまだら犬を連れてくると、可愛い声で前田に甘えた。

観念した彼は全てを話す。

偶然、若槻と出くわし、問い詰めた。

しかし、涙まで浮かべて頭を下げる若槻の演技にすっかり騙され、「新たな事業を起こすつもりだから協力してくれないか」と誘われる。

健康食品の通販会社を立ち上げるので取締役として力を発揮してくれないか?と。

商社で経験のある前田はそれなら自分にもできると乗ることに。

3度ほど新会社の事で話し合い、ある晩、若槻が酒を買いに出た際に、押し入れの段ボール箱が気になった。

中からは大量の株券が出てきて、自分が騙されていたことを知る。

若槻に腹を立てたのではなく、二度までも同じ理由で騙された自分に腹を立てた。

自分は仕事を求めたのではなく、肩書きが欲しかったのだ。

そんな自分を変える為に若槻殺害を決心。

靴は犯行の数日前、若槻から譲り受けておいた。
 

鬼貫さんが「株券を発見した時に彼を告訴したら、それで良かったんじゃ?」と問う。

前田吟は「甘い言葉に乗ってまた、騙されそうになったんですよって言うんですか?あんな男と酒を酌み交わして、またバカな夢を見るつもりだったと言うんですか?そういう自分が嫌でたまらなかった。私を捨てた会社や女房や弱肉強食の社会やこういう私が、若槻を作ってきたんだ。 殺すしかないだろ…殺すしかないだろ」


 私なら株券を持ってトンズラ。
 

鬼貫八郎…大地康雄
若槻俊…草薙良一
寺島扶美子…涼風真世
大町英一郎…前田吟
斎藤逸子…石井苗子
寺島繁雄…山上賢治
碓井刑事…羽場裕一
黒川課長…天田俊明
島田刑事…十貫寺梅軒 
【原作】鮎川哲也『まだらの犬』より