最近Twitterで「FM音源はやっぱり素晴らしい」的な呟きをしておりますが、どうやら俺はFM音源が好きらしいです、ということを特に実感するようになりました。
で、俺が音楽が好きになった(=もっと色々やってみたい)と思うようになったきっかけの一つって久石譲なんです。それも8~90年代の。初めて意識したのは「トトロ」の「風のとおり道」だったはず。何とも不思議な音楽に心地よいメロディが乗る形は当時の久石氏の特徴がまんま出てますね。で、その後ラピュタを観て音楽でぶっとんだクチです。
はいこの辺で流れる曲ですよっと ユメダケド、ユメジャナカッタ!!
この頃の久石譲ってFairlightを使って独自の世界を創り出していたんですが、当然Fairlightだけじゃないんですね。Fairlightは初期のサンプラーの典型的な例として挙げられることが多いですが、実際はサンプラーとFM音源を組み合わせたものです。そして中心はFairlightだったとしても、例えばDX-7とかProphet-5とかMini moogとかも上手く組み合わせてあの世界を創っていたわけです(ご本人もポップス系の仕事はこの3つ(=3種の神器)にリズムマシンがあればほとんど対応できたとかおっしゃってた気が)。
というわけでDX-7などのいかにもFM音源の話はよそに置いといて(「DX-7 30th アニバーサリーブック」は必読です…って絶版?でめっちゃ高くなってるやん)、ここではFairlight CMIを中心に色々思うところを書いてみます。
Failght CMI ※初代は1980年発売、お値段1,200万円ほど(当時
1980年と言えばYMOでもサンプリングはまだやっておらず、アナログシンセ全盛の時代
そんな時代にコンピューターに向かってライトペンで音を編集し、サンプリングされた音で音楽を創ることができたそうです
久石氏はナウシカの制作時に使ってみて衝撃を受け、「清水の舞台から3回くらい飛び降りる気持ち」で思い切って購入したとはご自身の著書より
(1985年に「ワンダーステーション」という名前のスタジオを開設されているのでその時期?あとPAGE R(いわゆるシーケンサー)の機能はSeries IIから搭載されたようなので、初代ではなくここから導入されたかも)
特にラピュタやトトロなどは映像と音楽のタイミングが上手く合わさっていますが、Fairlightのプログラミングを徹底して映像と合わせることで対応していたとかなんとか
当時は8音ポリだったので、「制限の中でいかに音楽を作るか」ということも鍛えられたともどっかで発言されてました
その後Series IIIに更新され、90年代中頃まで?ご自身の音楽制作の中心に据えていました
あっ当初フロッピーは8インチな!フロッピーって知ってるか若い子よ
Fairlightの画面の一例-1 ※PAGE A(サンプリング機能)
Fairlightの画面の一例-2 ※ハービー・ハンコック先生、PAGE R(シーケンス機能)を
タッチペンで操作中
※シーケンサーも8パートだったのが分かる
Fairlightの歴史は古いHPですがこちらが詳しいです↓
あとYouTubeでもFairlightの映像ってあったりなかったりだったんですが、これ以上のものは無いんじゃなかろうかと言えるドキュメンタリー(英語)を見つけたので貼っておきますので、興味ある方はぜひ
※いわゆる「オーケストラ・ヒット」の話はもちろん、プリセット音の一つである「ガラスを割れる音」をサンプリングしてる様子(ピーター・ガブリエル??)まで見れます(良く残ってたな
俺はいかにもアナログな「ふにゃ~」みたいな音よりも、少し尖ってキラキラしたような音-かといって今のサンプリング音源のようにリアルすぎない-が(特に当時は)印象的というか、すごく耳に残っているんですね。この時代はシンセサイザーもアナログからデジタルへ大きな変化を遂げた時期で、技術の進化という意味でも過渡期だったわけです。その時代の音がすごく好きなんです。
古き良き音は今でも使われて耳にするし、昔はめちゃくちゃ大変だったことが今ではお安く簡単にできる。実験的かつ新鮮な響きは今の時代はもっと簡単に作れちゃうけど、この時期にそれなりにコストをかけてミュージシャンもプログラマーも開発者の皆さんも必死こいて色々試した結果が今残ってる、ということにもなんかロマンを感じるというか。
でもその後のシンセサイザーは、技術の進歩に合わせてリアルなサンプリング音源が中心となる時代に突入しました。サンプラーも低価格であってもそれなりのクオリティの音が出せたおかげで、シンクラヴィアも含めた高価なサンプリング・ワークステーションは廃れていきました(そりゃ売れないわ買えないもん)。
実際(楽器としての)FairlightもSeries III(1985年)までリリースされたけど、90年代に入ると久石氏はMacを中心とした音楽制作ツールに移行され、現在の氏の音楽ジャンルはクラシックや前衛音楽といったご自身のルーツに回帰されています。
後は詳しくは書かないけど、もう一つのモンスター・サンプリングマシンとしてはSynclavierが有名ですね。これも基本はサンプリングとFM音源の組み合わせです。日本では小室某氏が一時期使ってたのが有名ですね。こっちは桁がひとつ多かったようですが…。
Synclavier(これは6400?) ※初代は1977年に登場
後期はMacintoshを使ってコントロールすることが多かったようです
見た目はFairlight以上にガチですね
ちなみに現在のFairlight社は色々あって当時のノウハウを元に映像に特化してる印象ですが、楽器としてのFairlightは数年前に「Failght CMI-30A」として復活してました。確か世界で100台とかの生産じゃなかったっけか?
Failght CMI-30A ※2011年、当時のレートで170万円ほど(鍵盤は別売りらしい、MIDIあるからええやん)
下手したら当時の1/10くらいの値段でサンプリング可能な周波数も含めてクオリティもかなり上がってるとはいえ、ここまでガチが欲しいとまでは思えないんですけどね。あと開発者がiOSで再現してるアプリも出たりして(「Peter Vogel CMI」:今でもApp StoreでDLできます)、これは当時うわぁってなりましたね。このアプリで当時の雰囲気は十分掴めて、「ああこうしてあの音楽作ってたのかなるほど」と勉強になりました。iPhoneでやるには画面小さすぎたけど。
もちろんFairlightは無くても今のサンプリング音源なら似たようなことはできるます。ただ、あの質感まではどうしても再現できないというか…DXエレピとかはけっこう他のメーカーでも良くなってるけど、Fairlightだけは自分のなかで別格なんですよね。
というわけでFairlightが使われた曲をちょっと再現してみたいんだけど、音がどうにもそそられなくてどうしようかなというところです。
…ソフトシンセ追加するしかあるまい?
分かる人だけ分かる話、おしまい。