うそ日記です! | 鬼ばかりの鬼のすみか

うそ日記です!

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遊園地に行く前日の夜に夢を見た。学校の校舎で真弓といつものように学校生活を送っている夢だったのだが普通ではなかった。学校には僕たち以外の人の気配はなく、なぜか全ての扉の鍵が開いているようだった。そして一番普通ではなかったのは、校舎の窓から見える世界は、白黒の世界が広がっていた。いや、白黒ではないのは、僕と真弓だけだった。窓から差し込む日差しは、暗いところを明るくするというよりも、黒を白に塗り変えていると言ったほうがよかった。
 
僕がその光景に驚いていると、真弓はいつものように何も変わらず僕にずっと話しかけていた。

「話聞いているの?」
 と真弓は僕の耳をひっぱった。痛くはなかった。夢なのだから。

「なんか変なんだよ。真弓以外全て白黒に見えるし、誰もいない。」
 と僕が言うと、

「どうしたの?大丈夫?愛しあっているもの同士にしかカラーでは見えないし、誰もいないんじゃなくて、恋人しかみえないのよ。恋は盲目というでしょ。常識よ」
 と真弓はチンプンカンプンな答えを言った。僕は理解出来なかったがそうだねと頷いた。
 見えるものが全て白黒というのは違和感が有りすぎるが、愛し合っている者同士にしかお互いの姿が見えないのは僕には嬉しかった。真弓が僕を本当に愛していることがわかるから。それにしても、この学校で恋愛をしている人間なんている話など聞いたことがなかった。聞いたことがないのは他人のことなど興味がなかったのだと思い出した。
 僕たちの姿が誰にも見えてないことをいい事に、学校で手をつないで歩いた。僕が突然真弓の手を掴んだので、彼女の頬の辺りが赤くなった。白黒の世界なだけに、彼女の照れて赤くなった顔は、より強調されて、僕はドキッとした。この世界では、黒を白にしか変えない太陽の日差しも彼女が浴びると彼女の美しさがより一層ひきたった。
自分の教室に行ってみることにした。教室に着き、扉を見るとやはり鍵はかかっていなかった。扉を開けるとそこは、いつもの騒がしい教室ではなく、ただ使うべき人間がいない机とイスが並んでいた。その静けさは不気味ささえ感じた。僕たちの席は教室のちょうど真ん中辺りのいつもの席に座った。

「みんなちゃんといるのかな?」
 と僕が言うと、イスをひいて座りかけている真弓が、

「いるわよ。私たちには見えないだけよ」
 と言った。

「愛しているもの同士にしか見えないのなら、どうして俺たちは見えたのさ?最初から好きだなんてことはないだろ?」

「本当に大丈夫?それは生まれたときから決まっているの。私たちはお互いが見える運命なの。恋する運命だったのよ。私たちは生まれてから、出会うまで一人だった。そして、十六年目で私たちは出会った。こうして早く出会えたのは運がよかったの」

「運がよかった?」
 僕は聞き返した。

「そうよ。この世界には運命の人に出会わずに一生孤独でこの世界を生きていかなくてはいけない人だっているんだから」
 真弓の話を聞いて一つのことが頭に浮かんだ。僕は心臓の辺りを何かに掴まれた感じがした。もし、真弓が僕の前からいなくなったら?真弓が僕を好きではなくなったら?真弓が死んでしまったら……僕はこの白黒の世界で、たった一人で残りの人生を生きていかなくてはいけないのだ。それだけなら、それだけならまだましだ。彼女を、真弓を失った哀しみを僕は背負って生きていかなくてならない。それなら、一生孤独に生きた方がいいそう頭に浮かんだその瞬間、

「私は勇に出会えてよかったわ。あなたに出会えて生きていると実感できた。あなたに出会えなかったら、生まれてきた意味がないもの」
 と本当に幸せそうな笑顔で真弓は僕を見た。
 真弓の笑顔でも僕の不安な気持ちは消えなく、頭に浮かんだ考えが全て僕の口から言葉となって洪水のような勢いで飛び出した。

「出会えたのはいいけど、真弓は俺がいなくなったらどうするんだよ?残りの人生を、失った哀しみを背負って生きていくことになるんだよ?」
 僕の不安を真弓に全てぶつけた。それでも彼女は笑顔だった。


「勇を失うのは哀しいよ。でもね。勇の顔や姿や私にくれた言葉は、私の心に一生残るんだよ。白黒の世界でも、勇がいなくなっても、私の心にはこの世で唯一のカラーの勇がいるのよ。目を閉じると勇が笑っている。それを見られるだけで残りの人生も生きていける。一生見るもの全てが白黒で、心が空っぽな人生より私は幸せよ」
 夢の中でも、僕は真弓に教えられた気がした。これは僕の夢なのだから、僕の意識とは
別に無意識の中でそう思っていたのだろうか…… 
 僕が真弓の顔をずっと見ていると、急に真弓が、白黒になって、周りの風景と溶け込んでいった。白と黒の世界が混じって灰色の世界へと変わっていった。今まであった教室が灰色の霧に包まれていて真弓の姿も見えなくなっていた。そして、灰色から暗闇の世界へと変わっていき、そこでその夢は終わった。
 目が覚めると金縛りではないのに夢のショックでしばらく動くことが出来なかった。ただ呆然といつもの天井を見つめていた。真弓がいなくなるなんて考えられないのに、こんな夢をみた自分に嫌悪感を憶えた。寝るときには被っていた掛け布団が体の上からなくなっていた。真弓が灰色の世界に消えていったときにもがいたせいだった。犬のチビが心配そうに上から覗いてきた。夢のショックから解き放ったのは母さんの声だった。
「ゆうすけー、いつまで寝ているの!今日はデートでしょ?」
 その母さんの声で動かなかった体が一瞬で動いた。掛け時計を見ると約束の時間まで三十分を切っていた。




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