昨年5月から運用されている法定相続証明情報制度ですが、平成30年3月29日法務省民二第166号通達によって、一部の取扱いが変更になりました。

 

概要としましては以下のとおり。

 

・相続登記等の場面において、相続人の住所の記載がある法定相続情報一覧図の提供があった場合には、当該一覧図をもって相続人の住所を証する書面の提供があったものとして扱う。

従来、法定相続情報は戸籍に代わる書面としてのみ扱われておりました。そのため、例えば、相続登記に際しては、不動産を取得する相続人の住民票など、住所を証する書面を別途添付する必要がありましたが、今回の通達により、一覧図を戸籍兼住所証明書として取り扱ってよいということになりました。

 

・被相続人との続柄の表記については、「長男」「夫」「妻」等として記載するようにする。

 

実は従来でも「長男」等の記載は許容されていましたが、あくまで例外であり、続柄については、「子」や「配偶者」等の簡易な記載が原則でした。(日本司法書士会連合会 法定相続情報証明制度に関するQ&A)

今回の通達によりこれが変わり、ちゃんとした続柄を記載するのが原則で、「子」や「配偶者」という記載が例外ということになりました。

 

・法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書の様式の変更

↓の赤いラインのところを見ていただきますと分かるように、利用目的欄に「相続税の申告」が追加されました。

税務署の見解が不明なようで、現状ですと、相続税申告に法定相続情報は使えないという見解の税理士の先生が多い印象ですが、これで問題なく使用できるようになりそうですね。

 

11月20日に埼玉司法書士会から、さいたま地方法務局より、以下の通知があったとの文書がきました。

1 PDFファイルに誤りがあった場合について
補正(字句の訂正,遺漏箇所の記載)の経緯が訂正印等で明らかとされており,登記官において,PDFファイルと特例方式により提供された登記原因証明情報の原本との同一性が確認できる場合には,書面による補正の方法に準じ,登記原因証明情報の補正を認めて差し支えない。
なお,補正後,PDFファイルを再送信する必要はないものとする。


2 PDFファイルの送信遺漏又は誤送信について
単なるPDFファイルの送信遺漏又は誤送信の場合,再送信は認められないので,これまでの取扱いと同様,登記申請の却下(又は取下げ)の対象となる。
ところで,資格者代理人において,オンライン申請後,PDFファイルの送信遺漏又は誤送信に気付いた場合で,正しいPDFファイルを添付の上,再度申請情報が送信されるとともに,誤って送信した申請情報に係る取下書(「その他事項欄」に「P
DFファイルの送信遺漏(又は誤送信)のため,平成○○年○月○日受付第○○○○号にて再申請の上,取り下げた。」旨が記載されている。)が送信されたときは,直ちに取下げの処理を行うこととする。
なお,提供されたPDFファイルについて,破損等により内容が確認できない場合又は開くことができない場合で,不当な申請でないと推認でき,登記情報システム上PDFファイルの提供があったことが確認することができるときは,再送信が認めら
れている。

要するに、

・PDFがちゃんとついていれば、事後的な訂正があったとしても補正はOK

・添付漏れや、違うファイルの添付の場合はすぐに取下げて再申請

従来だと、登記原因証明情報のPDFに訂正があった場合には、取下げが原則だったので、オンライン申請を躊躇する場面もあったのですが、これで臆せずオンライン申請ができます。

 

他の法務局での取扱いが気になるところですので、引き続き注視したいと思います。

事例:被相続人甲が作成した公正証書遺言で、乙が遺言執行者として指定されており、遺言書の内容としては、不動産を丙に遺贈するという内容である。

 乙は、成年被後見人であり、成年後見人としてAが選任されている。

 

 甲:被相続人・乙に不動産を遺贈する旨の公正証書遺言有り

 乙:成年被後見人、遺言執行者

 丙:受遺者 

 A:乙の成年後見人 

 

問:上記の遺贈の登記を、成年後見人Aが、登記義務者(遺言執行者)乙の代理人として申請できるか?

 

答:できない。

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 遺言執行者の欠格事由としては、未成年と破産者のみであり、成年被後見人は入っていません。そのため、理屈上は、成年被後見人が遺言執行者に就任することも可能です。

 

 一方で、遺言執行の各場面においては、遺言執行者の印鑑証明書が必要になります。しかし、成年被後見人は印鑑登録をすることができません。

 

 では、成年被後見人が遺言執行者として業務を行う場合、成年後見人がその代理人として業務を行うことができるのでしょうか。

 

 仮に、成年後見人が成年被後見人を代理して業務を行うことができるのであれば、成年後見人の印鑑証明書を使い、諸々の手続きを取ることができます。

 

 先日、成年後見人が、遺言執行者たる成年被後見人の代理人として登記を申請することの可否について某法務局本局へ照会をかけたところ、以下のような回答でした。

 

・成年被後見人が自ら遺言執行者の職務を行うことが可能な状態であるならば、義務者として成年被後見人自身が申請人となって申請を行う。

・自らが遺言執行者として職務を行うことができない状態であれば、家庭裁判所で遺言執行者の解任または辞任の手続きをして、遺言執行者を新たに選任した後に、新たな遺言執行者を義務者として申請を行うべきであると考えます。

 

 成年後見人が、遺言執行者たる成年被後見人を代理することはできないという趣旨のようです。

 「職務を行うことが可能な状態であるならば」とありますが、そのようなことは通常ないと思いますし、仮に職務を行えるとしても、成年被後見人の印鑑証明書を取得することはできないため、登記に必要な書類が足りません。このような場合、実質的には新たに遺言執行者の選任を申し立てるしかなさそうです。