「戦場のピアニスト」

<あらすじ>

1939年9月、ナチスドイツがポ-ランドに侵攻し、
第二次世界大戦の火蓋が切って落とされた。

ワルシャワ・ラジオ局でショパンの演奏をしていた
ウワディク・シュピルマン(エイドリアン・ブロディ)は、
爆撃を逃れ父母・弟・妹たちの待つ家へと向かった。

イギリス・ロシアの対独宣戦布告の報に喜ぶ一家だったが、
1940年ワルシャワはドイツ軍に占拠されてしまい、
ほどなく、ナチスによるユダヤ人迫害が始まった。

40年10月末、ワルシャワ・ゲット-(ユダヤ人居住区)への
移住が完了。周囲ではナチス、ユダヤ人警察(SS)による
理不尽な「人間狩り」「虐殺」が日常的に行われていく。

やがてドイツ人の雇用証明書のない者は収容所送りになる
という噂が広まり、ウワディクはSSに頭を下げ、
地下活動家の助けを借り、家族の為の職を得る。

しかし42年8月、ワルシャワ・ゲット-は閉鎖が決まり、
ユダヤ人の大半が収容所へ移送される日がやってきた。

収容所行きの列車に乗るための長い列にはウワディク一家の
姿もあったが、ふいに誰かがウワディクの肩を掴み
列から引き離した。SSのヘラ-だった。

こうして家族の中で
1人だけ収容所行きを免れたウワディクは、
ゲット-解体の作業グル-プに加わり、
ある時隙を見て脱走する。

その後ポ-ランド人の地下活動家たちの援助を受け、
隠れ家で息を潜めるような生活を送るウワディクだったが、
やがてそのつても断たれ、44年のワルシャワ蜂起
(独軍へのポ-ランド人の反乱)により瓦礫となった街の中に
彼は1人取り残されてしまう。


<感想>

感動で号泣・・・そんな映画と思って観に行きましたが、
予想(期待?)とは違った印象の映画でした。

でも凄い、とても凄い映画だと思います。

前半はホロコ-ストの有様を、
ユダヤ人の日常から描いていて、
それこそ目を背けたくなるような場面が沢山出てきます。

無差別の殺戮。

車椅子ごとバルコニ-から投げ捨てられる老人、
ゲット-外から食料を持ち込もうとして撲殺される子供、
餓死して道端に転がる死体、唐突に射殺される人々・・・。

主人公のウワディクは、
それをなすすべもなく見つめています。

彼は主人公ではありますが、ヒ-ロ-ではないのです。

持ち前のピアノで人々を勇気付けるでもなく、
ナチスと闘うわけでもなく、
何かを変えようとするわけでもない。

日常的に繰り返されるいわれなき迫害に、
次第に無表情になり、
瞳は悲しみをたたえていきます。

窓から外の出来事を覗くシ-ンが繰り返し出てくるのですが、
彼は「傍観者」なのです。

そして物語は、彼の視点で語られていきます。

だから収容所送りになった人々のその後などは描かれません。
戦況がどうなっているのか、
何もわからないままに話は進んでいきます。

観客は、彼と同じ視線で、ホロコ-ストを体験し、
後半のサバイバルでは、
彼と同じ不安の中に陥れられるのです。

映画は淡々と進んでいきますが、
ピアノに絡んだ印象的なシ-ンが
いくつか登場し、
ラスト近くでは見せ場が待っています。

そしてエンドロ-ルも、素晴らしかったです。

「感動の名作だよ!」と声を大にして言えないというのは、
映画があまりにリアルで痛くて、
そして傍観するしか出来ない事への
居心地の悪さに有るのだと思いました。

「どうだった?」と聞かれた時に、
返答に困ってしまう・・・

だからこれは、
「自分で観て確かめて欲しい」そんな映画でした。