古民家の壁には土で作られた壁が用いられる。「土壁(つちかべ)」あるいは「日本壁」と呼ばれる。土壁の土はその土地や風土で特徴があり、それらを生かすために地域によっては室内側と外部とで塗土を替えたり、土作り気候に合わせて作業の時期も替えたりしていた。

土壁の特徴は防火性、断熱性、遮音性、吸放湿性、耐久性に優れ、高温多湿の日本の気候風土に合う。室内が外気温の影響を受けにくく、一日中温度と湿度の変化を穏やかにする。また、土壁は耐久性も高く、最終的にはまた土に還る究極のエコ材料でもある。

土壁を仕上げる工程は、まず「水合わせ」と呼ばれる山や池の底などから採取した粘性の高い砂まじりの粘土に切った藁を混ぜる作業から始まり、一定期間置いてから壁に使用する。寝かせておく事で藁が腐り、藁の繊維質が土となじんで粘りのある土になる。古い土壁は粘性が落ちているが、新しい土と混ぜる事で再使用する事が出来る。土を寝かせる期間は様々だが、藁の発酵を促すには低温では難しいため「土は夏の土用を越させてから使え」と言われる。

藁を練り込む目的は、壁の補強や亀裂の防止、曲げ強度の向上など壁としての強度を向上させる補強材としての役割と、塗り壁材に弾力性を持たせ作業に使う鏝(こて)の伸びや鏝ばなれを良くする作業性を向上など。この練りこみに使う藁を関西では「すさ」、関東では「つた」と呼ぶ。なお藁による補強方法は日干し煉瓦などにも古くから使われていた方法である。

土壁の外部は日射の遮蔽や汚れ防止並びに意匠として漆喰が塗られる。土壁で造られる蔵などは「土蔵(どぞう)」と呼ばれる。